Blood Splash
@mineralwater
第1話 闇~アイラ~
ーー突如人体が流血し、血飛沫を上げ死亡する奇病『WBS症候群』。
何故か発症例は40代以上の女性に限られていた。
2年前、突如発生したウイルスにより母であるアマンダ・メイヤーズを亡くし
WBS騒動があってからというもの
父、アラン・メイヤーズは変わってしまった。
街1番の名医であった輝かしい父ではなく
病院をたたみ、毎日のように研究に没頭する日々。
研究が思うように進まないと唯一の家族であるアイラに暴力を振るうことも少なくはなかった。
アイラは耐えるしかなかった。
すっかり人間としての感情を失ってしまったアイラ。
家から少し歩いた先にある崖から海を見るのが日課になっていた。
その目に生気は宿っていない。
海は綺麗だ。青。アイラの好きな色。赤とは正反対の色。
アイラは赤色が嫌いだった。
母、アマンダが死ぬ際に染っていた色。
道行く女性が突然吹き出す血の色。
自分に暴力を振るう時の父の顔の色。
自分の腕の色。
赤色には嫌な思い出しか詰まっていなかった。
反対に青はどうだろう。
静かな色。穏やかな色。落ち着く色。
今まで青色はアイラを騒ぎ立てることはなかった。
このままこの色に溺れてしまえたら
どれだけ楽だろうか。
「アイラ!何してるんだい?」
そんな思いは、背後からのアランの声によってかき消される。
振り返れば笑顔のアランがそこに立っていた。
「…死ぬつもりかい?」
変わらずに笑顔で聞くアラン。
しかしその口調は明らかにアイラを追い詰めるものだった。
「…」
アイラはしばらく黙り込みアランのもとへ歩み寄る。
「…海…好きなだけ。」
ポツリと呟くとアランは笑顔になり
アイラの頭を撫でる。
「そうなんだね。今日は思う存分、泳がせてあげようか。」
「…」
今日は水沈めか、なんて思いながらも
アイラはアランについて行くことしかできなかった。
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