織田信長や武田信玄が天下を争う戦国の世。近江国のとある農民の少年が行商人として身を起こす。近江商人の哲学である「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」の精神で、人々の豊かな暮らしを目指して東奔西走する。
彼の名は甚右衛門。後の西川仁右衛門。現代まで450年続く老舗寝具メーカー「ふとんの西川」の創業者その人だ。
食料品や生活用品を売り歩く一介の行商人だった甚右衛門は、当時、高級品だった蚊帳の商いで成功して成り上がる。
されど武士がいくさに明け暮れる乱世。激動の中心人物である織田信長、その後を継いだ羽柴秀吉、石田三成、時の権力者のお膝下で商いをする甚左衛門たち近江商人は幾度となく時代のうねりに翻弄される。
それでも自分の利益ではなく、商売の師匠から託された「楽市(自由市場)」の夢を実現するために仲間の近江商人たちと力を合わせて困難を乗り越え、戦国大名の圧政に立ち向かう生き様に魂が震える。
これぞまさに商人たちのいくさ、商人たちの戦国時代を描いた歴史大河小説です。
(「一攫千金」4選/文=愛咲優詩)