昨日、俺は失恋した?

明弓ヒロ(AKARI hiro)

第1話 昨日、失恋した?

「いたたたっっっ!!!」

 朝起きた俺を、猛烈な頭痛が襲った。

「いてー!! 頭が割れるー!!」

 ガンガンと頭の中から殴られるような激しい痛み。こんな頭痛は生まれて初めてだ。


「風邪、引いたかな」

 立って歩くたびに、振動が頭に伝わる。リビングに行くと朝食の支度が済んでおり、すでに母さんは仕事に出かけたようだ。

「念の為、熱を測ってみるか」

 俺は洗面所に向かい、棚から体温計を取り出した。

「37度を超えていたら、休もう」

 誰にともなく、ひとりごとを言い、俺は体温計を脇の下に挟んだ。


 そして、30秒。ピーッ。

 運命の瞬間だ。


 俺は体温計を取り出した。


「36度2分……。しかたない、行くか」


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 朝食を食べているうちに、頭痛がだんだんと治まってきた。自転車に乗り、学校に着く頃には、嘘のように頭の痛みが消えた。

「いったい、なんだったんだ?」

 特に頭を、どこかにぶつけた記憶もなく、俺は首をかしげる。


 上履きに履き替え、教室へと向かう。いつもながら、教室内は騒がしい。


「おはようっす!」

 いつもどおりに、教室に入ると静寂が俺を迎えた。


「えっ?」

 先程までとは、うってかわって、水を打ったように教室が静まり返っている。クラスメイトたちを見回すと、誰も俺と目を合わせようとしない。


 何だこれは? いじめか? はぶれらた? 俺、なんかしたか?


 昨日までは普通だった、2年C組の教室。巷では、いじめや学校カーストなど、暗い話題が多々あるが、俺の通っている高校では、多少のいざこざはあっても、基本的には大きな問題もなく、皆、それなりに楽しくやっていた。


 特にC組は、他のクラスからも羨ましがられるほど、男子も女子も仲がいい。それが、なんでいきなり。


 ショックで、心臓がバクバクする。

 足を踏み出そうとするが、震えて足が出ない。


 なんだよ、これは。

 俺の目に涙があふれる。


 俺は、泣きそうになりながらも、必死にこらえ、自分の席へと向かった。


 席についても何も考えられずに下を向いていると、声がかかった。


「大丈夫か?」

 顔を上げると、翔太が心配そうな顔で俺を見下ろしていた。

「翔太……」

 俺の声が涙混じりになる。


「気にするな、と言っても無理だとは思う。でも、大丈夫だ。お前はまだ若い。これから、いくらでも出会いがあるさ」

「あ、ありがとう」

 翔太が思いやりのこもった声で俺を慰めた。


 んっ? いくらでも出会いがある? いったい、何のことだ?


 俺の頭に不信感がよぎる。見回すと、他のクラスメイトたちも、俺を同情の目で見つめていた。


「ところで、慰めてくれるのはありがたいんだけど、なんのこと?」

「なんことって……」

 翔太が、お前何言ってんだ、という顔をした。俺が何も言わずに、翔太の答えを待っていると、黙ってスマホを差し出して、俺に見せた。



## 好きな男ができたって、言われたー (´;ω;`)

## 俺と結婚するって言ってたのは、なんだったんだー!!

## もうダメだ……。死にたい……。



「な、なんだ、これは!?」

「なんだって、お前が送ったんじゃないのか?」

 翔太の不可解な視線を見て、俺も自分のスマホをチェックした。そこには、俺が入力した覚えのない、メッセージが表示されていた。

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