下手な詩集
北風 嵐
第1話 タバコ畑に風が吹く
男は20年前の忘れ物を取りに赤いピックアップトラックを走らせる。
海辺の鎌倉街道
赤いピックアップトラックを
男は走らせる
後部座席に女とその子供
いまもあるだろうか
トンネルを越して 右手の崖の上
薄紫色の夕焼けが タバコ畑を照らすだろう
タバコ畑に風が吹く
それはどっち側から吹いてくるのか?
それは行ってみないと分からない
そこに立ってみないと分からない
みわたすかぎりに 緑の波がうねる
夏の陽ざしの中で
父としたタバコ畑の隠れんぼう
タバコ畑の横に 父と母の墓がある
墓参りだというのに 花を買い忘れた
俺らしい墓参だと男は苦笑う
母は綺麗な人で 二人目の父は優しい人だった
タバコ畑に風が吹き
子供の麦わら帽子が飛んだ
帽子を探して 三人で隠れんぼ
通り抜ける風が男に囁いた
この子の父親になってやれよと
やがてタバコ畑の風がやみ
陽が海の向こうに沈んだ
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