きのう、失恋した

足ツボ

第1話

きのう、失恋した。


あれは初めて心からの恋だった。


生まれてこのかた恋愛というものに疎かったから告白の仕方が間違っていたのか、はたまたそもそもルックスの問題?いや、体臭?


考えれば考えるほど疑問は尽きない。


しかし、一つだけ言えるとすれば…


僕はまだ諦めきれないこの気持ちを若気の至りと一蹴することができなかった



「先輩!一目見た時からずっとあなたのことを追いかけてました。一目惚れです。どうか、どうか僕と付き合ってください!」


「んー、まさか私が告られる日がくるなんてね…しかも、君になんてね。」


先輩は笑いながらも続けて言った


「私は今好きな人は居ないし、恋人だって欲しいし将来的に結婚願望だってある。でも私ね、後輩君のことを実の弟みたいに思ってたから流石に付き合うってのは無しかな。ごめんね。」


そう言った先輩の目はとても穏やかだった


本当に他のことなんて対象として見てないかのように…ただ弟を可愛がるかのような視線で僕を見つめていた


「そうですか」


「はい、そうです。」


僕はこうも簡単に笑顔で即答されかなり心にきたようで、せっかくの作り笑いも台無しになっていたようだ


「あ、でも後輩君別に私が後輩君を振ったからって今まで通りで良いんだよ。私は別になんとも思ってないしこれからも仲良くいたいなって思うから。ね?」


「はい」


「じゃあ、私先に行くね」


そう言って先輩は先にこの場から離れていった


僕は何も考えることが出来なかった



家に着いてまず泣いた


泣きに泣いて知らぬうちに眠ってしまっていたらしい


目が覚めたのは朝の4時だった


まだ外は暗く昨日はあの件いらない何も口にしていなかったからお腹が空いていた


何かないかと家の中を物色していると先輩の好きだったタマゴサンドが目に入った


「先輩はいつもタマゴサンドを持ってくと一口よこせ〜って抱きついてきたっけな…」


なぜだろう、昨日流し切ったはずの涙がまた溢れ出してきた。振られたと言うのにまだ先輩のこと考えてる


今日からはまたいつものように接するんだって決めたのに、決めてたのに忘れようとすればするほど色濃く先輩の笑顔が頭から離れない


まだ外は暗い


とりあえずはこのタマゴサンドを食べて落ち着こうと思い袋を開けて食べ始める


僕に何が問題だったのか


先輩にとって僕が弟だからなのだろうか、生まれてこのかた恋愛というものに疎かったから告白の仕方が間違っていたのか、はたまたそもそもルックスの問題?いや、体臭?


考えれば考えるほど疑問は尽きない。


しかし、一つだけ言えるとすれば…


僕はまだ諦めきれないこの気持ちを若気の至りと一蹴することができなかった


結局学校に行く気にはなれなかった、親には風邪だと偽ったが体はいたって健康だ。でも心はまだ痛い


きっと今頃先輩は僕が学校にいつもと変わらぬ姿でやって来ると思ってるんだろな


そして考えるのをやめ眠りについた


午前11時、目が覚めた


夢を見てしまった、僕がいないことに気づいた先輩がしょんぼりした顔でお昼を一人で食べる夢を


確かに僕は先輩の彼氏になるなは役不足かもしれない


でも、先輩を笑顔にさせてやることくらいは僕にだってできる


11時3分、今から行けばお昼までには学校に着く


急いで制服に着替える、歯を磨き、顔を洗いカバンに弁当を…ん?弁当…


そういえば親には風邪だと偽ってしまったし、タマゴサンドも食べてしまった


先輩の好きなタマゴサンドが買えるお店は10時半開店だったはずだ


行ける、行けるぞ!


そのまま家を飛び出した


「先輩行きます」



「後輩君今日居ないなー。やっぱり昨日のアレがマズかったかな?でも、後輩君ならきっと…」


先輩は外を眺めながらお昼はどうするかを考えていた


そこに


「あ、後輩君だ。やっぱり」


先輩は笑っていた



ハァーハァー…


間に合った、昼休みまであと5分


先生になんて言い訳しようかなと考えながら教室に入った


教師からはお前今日何しにきたんだと言われたから僕は言ってやった


「昼飯食いにきました」


教室からは笑い声が聞こえ教師からはため息が漏れた


そんなこんなでチャイムが鳴り僕は先輩を昼食に誘いに行く


「いた!」


「あ、後輩君。今日休みじゃなかったの?」


「昼飯食いにきました」


「はは、そうかやっぱり後輩君は面白いね。行こ。」


「はい」


そしていつもの場所で


「そういえば後輩君今日なんで遅…あ!それ私の好きなタマゴサンドじゃん!一口ちょうだい〜」


「いいですよ」


「ありがとう後輩君。」


「ねぇねぇ後輩君」


「何ですか先輩?」


「好きだよ」


「弟としてですか。知ってますよ」


「うんうん、人としてなんなら異性として好き」


「え?」


「私、一回振っても諦めず私を好いてくれる人と付き合いたかったの。だ・か・ら」


先輩は不意に僕の頬についたタマゴに口づけした


「合格だよ後輩君」


「大好き」


「ぼ、ぼ僕もです、先輩!」





きのう、失恋した


でも、きょう得恋した



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きのう、失恋した 足ツボ @asitubo

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