短編集

さばりん

従妹からのバレンタイン

 26才の僕には、ひと回り離れている年下の従妹がいる。

 その従妹はバレンタインになると毎年手作りのチョコレートを僕に贈ってきてくれる。

 そして、今日は2月14日。今年もバレンタインデーがやってきた。


 僕は仕事から帰ると、母親から荷物を受け取った。

 それは、従妹から僕宛に届けられた丁寧に黄色いリボンで包装された赤い箱だった。

 箱を開けると、そこには綺麗に並べられたトリュフチョコレートが10個入っていた。


 僕は笑みを浮かべながらそのトリュフチョコレートを一つ口に含んだ。

 口の中でチョコレートがほろほろと溶け、チョコレートの香りと甘みが口の中に充満する。

 甘すぎず、ちょうどいい味のチョコレートは一生懸命手作りしてくれたことを実感させてくれる。

 そして、チョコレートの隣に手紙が入っていた。そこには、従妹からのメッセージが書かれていた。


『大好きな従妹のお兄ちゃんへ。今年はトリュフチョコレートを作ってみました。頑張って作ったので食べてください。』


 そこには、彼女の気持ちのすべてが手紙に書かれていた。

 表向きではあまり感情を出さなくなってきてしまった彼女の素直な気持ちがこの手紙には表現されていた。


 僕はスマホのトークアプリを起動して従妹とのトーク画面を開く。

 トーク履歴には『あけましておめでとう』というメッセージと『お誕生日おめでとう』のメッセージ、そして『バレンタインありがとう。』の3つのメッセージが毎年のように繰り返されている。

 

 今年も僕はまた『バレンタインありがとう。』というメッセージだけを送ってスマホをしまう。

 

 そして、僕はもう一つトリュフチョコを口に入れるのであった。

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