敵討ちの助太刀に現れた犬塚は、

すでに刀を抜いている。


つかつかと歩いて行って柳生の間合いへ入る。


柳生も越後屋の娘を殺すべく、

すでに刀を抜いている。


柳生最善の策は娘を人質に取る事だったのかもしれない。



後の先を狙う柳生はコンパクトな中段構え。


最初は隙だらけの歩行だった犬塚は刀の間合いに入る瞬間から、

歩き方が変わっていた。


犬塚はゆっくり刀を中段にして進み刃先同士が触れる。


何の攻防も無く、ただ素早い方が勝つ間合いになった。



そこへ同心が二人、槍を持って加勢する。


それぞれ犬塚の斜め後ろへ回り込んだ。


動かない柳生と犬塚に対し、

リーチで勝る同心が先に動く。


一人が突いてきた。

犬塚は回転しながら突きをそらす。


もう一人の同心と柳生が追撃に動いたが、

しかし追い付かれる前に最初の同心をみねうちして倒した。


槍で突けば反撃で倒される。

そう確信できるほどの動きだった。


自然と同心が間合いを広げて下がる。


柳生の構えはコンパクトなまま、再び一騎打ち。



犬塚が落ちた槍を片足に乗せた。

屋敷は薄暗い、飛び道具は見えにくいだろう。


柳生に向かって槍を足蹴に飛ばす。

槍は弾かれた。

しかし単なる槍投げのはずが柳生には異様に重く感じられた。


続いて犬塚が放った袈裟斬りも刀で受け止められた。


重すぎる一撃を受け止めた柳生の手がしびれ、刀を落とす。

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