侍
敵討ちの助太刀に現れた犬塚は、
すでに刀を抜いている。
つかつかと歩いて行って柳生の間合いへ入る。
柳生も越後屋の娘を殺すべく、
すでに刀を抜いている。
柳生最善の策は娘を人質に取る事だったのかもしれない。
■
後の先を狙う柳生はコンパクトな中段構え。
最初は隙だらけの歩行だった犬塚は刀の間合いに入る瞬間から、
歩き方が変わっていた。
犬塚はゆっくり刀を中段にして進み刃先同士が触れる。
何の攻防も無く、ただ素早い方が勝つ間合いになった。
■
そこへ同心が二人、槍を持って加勢する。
それぞれ犬塚の斜め後ろへ回り込んだ。
動かない柳生と犬塚に対し、
リーチで勝る同心が先に動く。
一人が突いてきた。
犬塚は回転しながら突きをそらす。
もう一人の同心と柳生が追撃に動いたが、
しかし追い付かれる前に最初の同心をみねうちして倒した。
槍で突けば反撃で倒される。
そう確信できるほどの動きだった。
自然と同心が間合いを広げて下がる。
柳生の構えはコンパクトなまま、再び一騎打ち。
■
犬塚が落ちた槍を片足に乗せた。
屋敷は薄暗い、飛び道具は見えにくいだろう。
柳生に向かって槍を足蹴に飛ばす。
槍は弾かれた。
しかし単なる槍投げのはずが柳生には異様に重く感じられた。
続いて犬塚が放った袈裟斬りも刀で受け止められた。
重すぎる一撃を受け止めた柳生の手がしびれ、刀を落とす。
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