千里眼の忍
名無しの権兵衛は大坂城下の東町奉行所へ向かっていた。
奉行所には御庭番の遠国御用達が多数存在している。
権兵衛は月影が犬神神社で死んでいる事を報告すれば任務完了だ。
あとは表沙汰に処理される。
■
きくゑは権兵衛をどこにも向かわせてはならない。
月影が神主だった事が知れたら、
神社に疑いが掛かかる。
直ちに殺さねば。
それは月影の遺志、かぐや姫の命でもある。
きくゑは馬に乗り権兵衛を追った。
通常、馬を使えばパカパカと蹄の音で追跡も逃走もばれる。
しかしきくゑには千里眼がある。
正確に敵の位置が分かるなら、
『足音の聞こえない範囲まで』は馬も使えるのだ。
■
権兵衛は城下町を徒歩で南下している。
一見してただ歩いている人。
寝静まる夜道で馬が走る音が聞こえてきた。
どんどん自分に近づく気がする、蹄の音に忍びの勘が働いた。
このまま歩いても何も怪しくないのだが、
今夜は打ちこわしのあった夜。
そして明かりも点けずに暗闇を歩いている自分。
権兵衛は無難に身を隠す事を選んでしまった。
良い選択だったが千里眼に対しては無意味。
権兵衛は隠れると言うリアクションを起こした。
きくゑは月夜で見えないぎりぎりまで距離を詰め、
馬から民家の屋根へ飛んだ。
馬より小さい足音で並走する。
馬は暗い月夜で一頭にされ速度が落ちた。
きくゑは馬の尻に小石を投げて安心させ、前進を継続させる。
権兵衛は物陰から馬を凝視している。
馬上には誰が?
しかし誰も乗っていなかった。
権兵衛の上にはきくゑが肩車の様に乗り、
同時に毒クナイを目に刺す。
さらに倒れこむ勢いを利用して首投げを仕掛けた。
捻りながら倒してマウントポジションとなる。
完成された型通りの動き。
権兵衛の口が痛みを発する瞬間を狙い布を押し込むが、
歯を食いしばられた。浅い。
権兵衛が暴れる。
目に刺さった毒クナイを双方が掴んで力がこもる。
こう着状態は権兵衛が奥歯の毒薬を飲み、自殺して終わった。
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