第3話 落としたスマホ 三
しかし、高1の秋の頃、ふと思ってしまった。
『俺、成績ひでえな…。
ってか俺、この高校の中で、人より優れていることってあるか?
何もない気が…。』
そう思いだしてから俺の心が転落するまでは、早かった。
実際俺は、まあ欠点は免れていたものの、5教科の成績はトップクラスとは程遠いものであった。それに、運動面に関してはまあできたが、それも周りと同じ平均的なレベルで、例えば部活で好成績を収めたとか、そんなことは一切ない。
『…ってか、そんなの本当は、人と比べるものではないよな…?』
俺はそんな「劣等感」を感じる度、そう自分に何度も言い聞かせた。
そう、人より優れていること、人と比べることにアイデンティティを求めるのは、本来なら間違っている…それは百も承知だ。承知なのだが、俺は…どうしても人と比較してしまう。そして、自分のできなさ、ふがいなさに腹が立ち、また虚しくなる。
『こんな気持ちになるなら、進学校なんかに入学するんじゃなかった…。
もっとレベルの低い高校なら、俺は優越感を失うことなんてなかったかもしれねえのにな…。』
俺は中学時代、優越感を感じながら生活していたわけでは決してない。しかし、近頃の俺はそんなことまで考えてしまうこともあった。そして、それはレベルの低い所への「逃げ」だと感じて自分が嫌になったり、また根本的にそんな卑しい考えを持ってしまう自分自身に嫌気がさしたりして、俺の心はブルーになった。
また、そんなことを考えているうちに段々虚しさがこみ上げてくるようになって、
『俺、結局の所、何のために生きてるんだろう…?』
そんなことまで考え、そして答えは出ず、また虚しくなる…そんなことを繰り返すようになった。
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