第21話 ガルナの塔(ドラゴンクエスト3より)

 遠く地平線に向かって目を凝らすと、なだらかな横一文字は見えず、代わりに峻険な山々とその稜線が空との境目に食い込んでいた。

 しかし、街道とも山道とも呼べる急勾配の道は、たしかにまっすぐ南から北に向かって続いている。

 北端に見えるのは、飛行型の魔物も飛び越えることのできない連なる山の一部。しかしその手前にちょこんと頂上部を覗かせる建造物がある。それは古代に建てられたとされる有名な塔の迷宮だった。名を、ガルナの塔という。


 ガルナの塔にたどり着くころにはすっかり日が暮れてしまった。


 あれだけくっきりと空と山とを分けていた色は、すっかり黒く染まってしまっている。強い月光が反射しているのか、それぞれを区切っていた部分が、雷が薙いだとも思える線を描いている。


 そんな周囲の景色を差し置いても目に焼きつくのは、もちろん目の前で偉容を放っている巨大な建造物だ。

 ガルナの塔は月光を壁面に受けて、鈍く光っているようだった。灰褐色が妖しく輝き、下部から上部までをじっとり眺めた。巨人が塔となって眠っているようだ、などと言ったら笑われるかもしれない。しかし、本当に物を発しない建物とは思えなかった。この塔は、生きている。


 好奇心を抑えずにはいられなかった。

 視界が悪く魔物と戦いにくい夜だというのに外周部を回ってみることにした。


 壁面に手を触れさせて、移動する。

 つつつぅっと石造りとは思えない感触が返ってきた。

 よく磨かれた金属板に指をすべらせたものに近い。


 いったいこの古代の塔はどうなっているのだろう。

 内部を無事に探索できるか。強力な魔物はでないか。

 心配は尽きない。


 畏怖を感じた。



検索単語

※なだらか

※稜線

※境目

※急勾配

※薙ぐ

※地上

※差し置く

※偉容

※たたえる

※灰褐色(黒く見えるほど深い藍色)

※畏怖

※畏敬

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