第47話 魔剣
Twitterとかで『2文字で自己紹介』みたいなタグがあったんですが、多分私は『妹萌』か『妹好』でいけると思います。
ぜんっぜん小説とは関係ありません。
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赤黒い瘴気を放ち、禍々しい黒に塗りつぶされた、不自然な曲線を描く剣。
それは自然と宙に浮遊しており、まるで俺を誘うかのようにカタカタと小刻みに揺れていた。
魔剣ティソティウス。分かる、こいつはやはり、ルサイアの頃の俺が手を出していいものじゃなかった。
精神だけじゃ足りない。今でこそ問題ないだろうが、純粋なステータスも必要だ。
あの頃不用意に触れていたら、高確率でやばい事になっていた。
放たれる瘴気は徐々に範囲を広げ、どこか空気も澱んでいく気がする。
「取り敢えず、自分から攻撃してきたりはしないか……」
一応魔剣が単体で動き出す可能性も視野に入れていたが、それはないようだ。魔法的な力で自身を宙に浮かせて、漂うのみ。油断させて、というのなら未だ警戒は解けないが。
「そんな瘴気を漂わせてたら、普通触れようとは思わないだろ」
普通じゃないやつが多いからこそ、これなのだろうが。
一応、改めて俺は魔剣を鑑定してみる。以前とは違い、[禁忌眼]のため、少しは新しい情報があるといいが……。
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魔剣ティソティウス 等級:
年齢:802歳
世界中のありとあらゆる怨嗟の念が溜め込まれた呪われし魔剣。その怨嗟は一つの集合体となり、自我をすら持っている。
装備者に強大な力をもたらすが、呪いによって、剣に溜め込まれた怨嗟は装備者をも取り込もうとするため、この魔剣の使い手は過去にほとんど居ない。
斬りつける度に、対象のパラメータが低下していく。
[特殊効果]
【攻撃時生命力低下付与Lv.10】【攻撃時魔力低下付与Lv.10】【攻撃時筋力低下付与Lv.10】【攻撃時体力低下付与Lv.10】【攻撃時知力低下付与Lv.10】【攻撃時敏捷低下付与Lv.10】【攻撃時運低下付与Lv.10】
[バッドステータス]
【呪いLv.10】(【生命力低下Lv.10】【魔力低下Lv.10】【筋力低下Lv.10】【体力低下Lv.10】【知力低下Lv.10】【敏捷低下Lv.10】【運低下Lv.10】【猛毒Lv.10】【神経麻痺Lv.10】【盲目Lv.10】【全聾Lv.10】【幻痛Lv.10】【筋弛緩Lv.10】【魔水Lv.10】)
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なんだ、ほとんど変わってないか、と思うのも束の間、以前は『年齢』なんて言うものはなかった。
そもそも武器に年齢なんてあるわけないが、もしやこの魔剣は、生命と考えていいのだろうか。自我を持っているとも言っているし。
あと何気に長寿なのだが。800って、これ魔剣が製造されてからなのか? それともその"自我"とやらを持ってから?
それにしても、相変わらずのバッドステータスだ。隠されている効果の一つや二つはあるかもと思ったが、さすがにそこまでは無かったか。
とにかく、この呪いにまずは打ち勝たねば。
「さて、どっちが
喋れるはずもないので返事を期待した訳では無いが、まるで魔剣は俺の言葉に答えたかのように、俺の手元に寄ってくる。
「話が早くて助かるな……よし」
俺は間近で瘴気を放つ魔剣に、手を近づける。
瘴気は触れるとピリピリとしたが、実はこれ、腐食性があることを[禁忌眼]で知る。
ピリピリで済む俺って……呆れとも似た思考を携え、俺は一気に魔剣を掴んだ。
「おっと……」
一瞬、呪いの効果だろうか、まるでインフルエンザの時のような吐き気とだるさの症状が、魔力が抜かれていく、体の力が抜ける感覚が俺を襲ったが、それはすぐに消え去った。
代わりに、それがトリガーであったのか、魔剣はまるで根でも張るかのように、柄の部分から青黒い蔦のようなものを生やし、俺の腕に瞬時に纏わりついてきた。
蔦の先が鎌首をもたげ、俺の皮膚にめり込む。
「────っ!?」
その瞬間、俺と魔剣の精神がその蔦を介して接続されたことを知り、魔剣の中に溜め込まれた負の感情が、一気に俺に────。
◆◇◆
魔剣ティソティウスには、自我というものがある。
自身をしっかり認識し、意識というものがあり、思考が存在した。
だがその意識レベルは通常の生物に比べれば極めて低く、言葉を理解することは出来ても、思考能力は野生の獣と同程度のものしかなかった。
だからこそ、
だが、問題があったとすれば、ティソティウスが世間では忌むべきものとされている『魔剣』であったことだろう。
正義の象徴であり、光を示したものである『聖剣』とは対照的に、『魔剣』は悪であり、闇であった。
事実魔剣には、強力な力と同時に、使い手を蝕む呪いがある。
魔剣の力が強ければ強いほど、比例するように、呪いの力は強まる。
ティソティウスは、その呪いの力が一際強かった。
使い手を死へと誘う、真に呪われた魔剣。
もちろんそんなことで死ねば、使い手が最後に思うのは、自身の命を奪った魔剣への憎悪に決まっている。
そして武器は、どうやら使い手の感情を強く受け取ってしまうようだった。
いや、もしかしたら最初から、そういうコンセプトで作られていたのかもしれない。
ティソティウスが使い手の憎悪や怨嗟といった負の感情を受け取り、溜め込むことは自然なことだった。
その後も魔剣の力を求めて、もしくは偶然手にして、そして死んでいく使い手。
中には強靭な肉体と呪いの耐性により、他の者よりも長く使った人物も居た。
だがしかし、結果は同じこと。
皆同じように魔剣を恨み、怨み、憾む。
その度に、自我を持ったティソティウスには、そういった負の感情が伝わり、溜め込まれた。
ティソティウスという自我がそれでも保つことをできたのは、幸か不幸か、自身があくまで生命ではない、単なる武器だったからだろう。
感情を受け取ることは出来ても、それを理解することが出来なかったからこそ、逆に自我を保つことが出来た。
しかし、それも長く続けば、いつかは自我ではなく、魔剣の方に限界が来る。
どの瞬間からか、魔剣ティソティウスは、単純に強力で強い呪いがかかっている魔剣ではなく、使い手に自身の中に溜め込まれた怨嗟を伝えてしまうという力が備わってしまった。
使い手を死へと誘うだけでなく、使い手を自身に溜め込まれた怨嗟で破壊し、取り込むという力。
触れたものが次々と死に、自身に飲み込まれていく光景は、自我を持ったティソティウスにある本能は、嫌がった。
魔剣としての力と、それを嫌うティソティウス。
何時しか死者が出すぎたせいでほとんどのものは触れなくなり、目にすら映らなくなっていく。
触れれば死に、それが嫌なら人々から忘れ去られる。
両極端な答えしかないティソティウスの道。
ティソティウスの本能が求めるはずのない答え。
しかし、どれほど経ったかわからない時、久しぶりにティソティウスは人に会った。
『さて、どっちが
自身に勝負をもちかけてきた、彼。
年月のせいか、ティソティウスは自身の力すら忘れて、その人物に自身を手に取ってもらおうとした。
彼は、ティソティウスにあった呪いが効いていないのか、一瞬だけ苦しそうに顔を歪めたものの、それだけだった。
彼は、ティソティウスの蔦に腕を巻かれようと、嫌がる素振りを見せずにいた。
流れ込む憎悪をものともしていないのか、はたまた耐えているのか。
今までなら、既に廃人となっているか、死んでいるかの時間。
しかし彼は、魔剣を掴んだまま、蔦を剥がすことも無く、じっとしていた。
掴まれた柄から、彼の感情が流れ込んでくる。
今までの死に際の負の感情とは違う、もっと何か、穏やかなもの。
きっとそれは、この人物が今感じている感情では無いのだろう。
まるで彼が今まで感じてきた感情が、流れ込んでくるようだった。
今この瞬間のものでは無い、もっと昔からある、人の様々な感情。
自我のあるティソティウスにとって、この瞬間、初めて自身の本能が、道具としての
ティソティウスは、感情というものがここまでのものなのかと、驚きを知った。
ティソティウスは、自身の力に飲み込まれない人物がいることに、喜びを知った。
ティソティウスにあった、道具としての願望、それは─────
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