第45話 久々の休日

 私って超がつくほど妹萌えなわけで、現実でも妹が欲しいなと思うわけなんですが、もし昔から妹が居たなら、こんな考えにはならなかったのかな、なんて思ったりします。よく妹がいる人は煩わしく思うなんて言いますし、自分も弟は居るんですが、酷くうるさく感じますし……


 それを考えると、これだけ妹キャラを愛せるのはリアルで妹が居ないお陰なのかもしれないとか考えたり。


 ちなみにこのお話は本編とは何ら関係ありません。


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 問題事というのは別に毎日起こる訳でもない。


 学校というひとつの機関に属してしまうと、どうも今でと比べて一日の濃密さが薄れていくような気がしてならない。


 リーゼロッテとは、お昼の時にあの場所で一緒になるようになったこと以外は進展もなく、あの男が再び俺の前に現れることも無く、時間は過ぎる。


 学校に通い始めてから3日が経ち、今日は4日目だった。


 「今日は休みか……この世界にも土日休み的なものがあったんだな」


 昨日、今日は学校が休みであることを伝えられた俺は、そんなことをしみじみ思う。


 この世界での暦は少々覚えにくいもので、まず地球で言う西暦に該当するのは、『世界暦』というもので、今は1524年とのこと。

 これは世界が誕生してからおよそ1500年経った、という意味らしいが、それが真実なのか、知るものなんて居ないだろう……多分。


 なお、一年は309日と地球に比べると少し短く、当初は『太陽みたいなのを309日で回ってるのか』なんて思ったのもつかの間、この世界が球体であるという根拠はどこにもない。

 そもそも、星もほとんど見えず、月や太陽らしきものも、実際のところ宇宙に存在するものなのか、それとも何か魔法的な力が働いている結果のものなのかすらわからないのだ。

 今度行けるところまで飛んで確認してみよう、という考えが脳裏を過ぎった時は、人間を卒業してしまう気がしたので直ぐに振り払った。


 一日が凡そ24時間であるのは地球と同じで、分や秒という単語や、時間に関する知識もほぼ地球と同じだが、曜日は月火水などではなく、各属性で表している。


 火の日から始まり、水の日、風の日、土の日、光の日、闇の日。

 これが一週間であり、地球では一年がおよそ52週であることを考えると、この世界は309日を6で割って、およそ51週間となる。週の数で見ればそんなに変わらない。


 ただ、どうもこの世界の人達、あまり曜日的な感覚がないのか、今日が何の日かなんてほとんど覚えちゃいない。スーパーのセールなんてものはないし、この世界の店はほぼ年中無休。

 仕事なんかもシフトなどはなく、『明日休みだから』『了解っす』的なノリのみで、カレンダーもない。


 また、季節はあっても月はなく、春の何日目という数え方をする。こちらも覚えている者なんてほとんど居ない。

 

 時間にルーズなのだろう。こっちの世界に来て特に決まった生活を送ることも無いため、今のところは困っていないが、もし普通の生活を送るようになったら、カレンダーでも作成しよう。


 

 っと、それで、今日は闇の日と言う如何にも中二的な日なのだが、ここは地球で言う土日に当たり、学校が休みなのだ。

 まぁ、休みは一日だけですけどね。それが普通だ、慣れろ俺。


 ルナ達と寝ることに最早躊躇いが無くなってきた俺は、ベッドから体を起こしつつ、今日は何をしようかと悩む。


 思えば何もすることがないのは珍しい。もしかしたら今俺は、この世界に来て初めて"休日"というものを味わっているのかもしれない。


 「今日は思考がやたら先走るな……」


 考え始めたらキリがないことを自覚した俺は、口に出して自制を働きかけつつ、脳内でやることリストをピックアップする。


 途中『王城に忍び込むか』という思考が割り込んできたが、今は本に飢えているわけじゃないので止めた。

 逆に言えば、飢えていたら行っていたということなのだが……それはともかく。


 幾つか候補を絞り出すと、そこに飛び入り参加してくるものもいた。


 「そうだ、剣がもうダメだったんだか」


 たまたま思い出したのは、前にグリムガルと戦闘を行った時のこと。魔力を纏わせた剣で攻撃したのに、やたら硬い鱗に弾かれてしまったのだ。

 別に魔法でどうとでもなるが、もし魔法や魔力が使えなくなった場合のことも考えると、武器自体も強化しておきたい。


 だが、一日で鍛冶が出来るようになるとは、流石の俺も思わない。となると、『無限収納インベントリ』の中の武器を確認するか、新しい武器を探しに行くかだが、後者は時間がかかるだろうし、今の剣だって特異級ユニークであり、既に一級品だ。これ以上のものを探すには労力がかかるだろう。


 かといって、迷宮で何度も開けた宝箱からは、運悪くというか、別段その時は求めてもいなかったからか、特異級ユニークを超える剣は1つも出なかった。槍やら鞭やらは幾らか出たのだが。


 ………あぁいや、一つだけあったな。特異級ユニークどころか聖剣すら超えかねないような剣が。


 「……魔剣か…………すっかり忘れてたな」


 確か、魔剣ティソティウス。等級は幻想級ファンタズム

 ルサイアで迷宮の崖から落ちた時に見つけたものだ。バッドステータスのオンパレードで、その時の俺は安全のために触れずに回収したはずだが、あの剣ならもしや……。


 だがリスクはある。呪い系に関しては、俺は耐性スキルを持っていない。一度も呪いなんて受けたことがないから仕方ないのかもしれないが。

 [全状態異常無効]や身に覚えのない[侵食無効]というユニークスキルが呪いに効いてくれる保証もないし、今の俺が耐えられるかどうかもわからない。


 確か、憎悪だか怨嗟だかを溜め込んだ魔剣で、自我すらも持っているとか。それで、装備者を取り込もうとする、という情報があった。


 「魔剣装備したら悪堕ち勇者だな。割とガチで」


 呪われた魔剣を装備して強くなる勇者……可能性はないとは言いきれない。

 代わりにやたら残虐になるんだな。俺がそうなったら拓磨や叶恵なんかが止めてくれるだろうか?


 あの剣を装備するにあたり、まずは周囲に影響が及ばない場所で出さなければいけないだろう。瘴気見たいなの出てたし。

 街の中でやったら危険だろうか。となると、街の外か……。


 ルナ達が起きる前に行って、出来ればさっさと帰ってこよう。


 水魔法で水を出して顔を洗い、スッキリした状態になってから、俺は『転移テレポート』で街の外に転移する。


 広い平原と、背後には街を囲む巨大な壁。そう言えば俺が待ちの外に出たのは、移動以外ではこれが初めてかもしれない。

 これから魔剣に触れることも考えると、今日は初めてづくしだ。


 「さて、と……」


 この魔剣の危険度は、単純に強い魔物と戦う以上のものだ。

 俺が死ぬだけならまだいい。いや、マシっていう意味で、死んでもいいって訳じゃないが。

 装備者をも取り込もうとする、というのがネックだな。俺の肉体が物理的に消失するという意味なのか、精神的に取り込まれて、肉体は残るのか。


 その場合、自我がない状態で魔剣の方に操られでもしたら、ヤバいぞ。俺の強さはスキルやパラメータ以外に俺自身の技能に頼っている部分も大きいが、それでもスキルとパラメータだけで並の相手は瞬殺できる。

 普段は自制したりしているが、俺ですら出したことがない本気を魔剣の方の意思で勝手に引き出されでもしたら……。


 「国が滅びるぞ、冗談抜きで」


 だからこそ、危険度が高い。高すぎると言ってもいい。


 全く、簡単に考えはしたが、相当な下準備が必要そうだこれは。万が一も考えればキリがないかもしれないが、その万が一になったら取り返しがつかないのだ。

 いや、万が一という確率ですらない。実際どの程度俺に影響があるのか不明なため、実質は『成功』か『失敗』の二択、50%だ。


 50%の確率で大災害が起きる。隕石が頭に直撃する確率とは大違いなのだ。

 

 

 


 

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