第3話 RPGでレベルが上がらなくなるとやる気がなくなる
風邪、引いた。喉、痛い。熱、ある。
早く寝るが良し( ˘ω˘ )zzz
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1階層辺りにかかる時間は、最初はなんだかんだあって2分ほどかかっていた。
何だか今日はネガティブ思考で、色々と合間に考えてしまうのだ。それのせいで、多少時間が増えている。
だが、それも最初のうちだけだ。
魔力で索敵し、魔物の魔力反応目がけて[時空魔法]を発動し、次の階層へ。
この一連の動作が段々スムーズになり、考え事していてもある程度作業的な感じで出来るようになったのだ。
まぁ、その時には既に50階層分終わっていたのだが。
「そう言えば、何階層までやればいいんだこれ?」
ふと、魔物をまた殲滅しつつ、俺は疑問に思う。
まぁ、やれる所までやればいいか。恐らくこの迷宮は、魔物の数が減れば減るほど
魔物を倒しすぎることによるデメリットはないと思うので、問題ないだろう。
「ま、それでいいけど……流石に魔力が減ったな」
意識した途端、著しい魔力の損耗による疲労感が、俺の体に訴えられる。
むしろ、今になってようやくか、と言うべきなのだろうが、俺の魔力量は本当に規格外だ。
まぁ魔力量だけでなく、魔力の最高効率運用に、必要最低限だけの魔力を使用するという、節制による結果でもあるのだが。
だがそれでも、まだ半分以上は残っている……というか、魔力の生成速度の方が早い気がして、少し休めば直ぐに戻りそうではあるが。
休む間もなく、3桁の上級相当魔法を常に使用しなければ、生成速度に追いつかれるという。
何故か生成速度に追いつかれてはいけない、みたいな感じの聞こえ方になるが、もちろんそんなことは無いので、俺は気にしないが。
だが、早く済ませた方がいいのも事実。ここはさらに作業スピードを上げるとするか。
無詠唱で『
割と、敵を一気に倒すのは爽快感がある。視覚にはないが、感覚的に敵を倒したのがしっかりと分かるので、ストレスを発散させるにはちょうどいい。
作業も、楽しめれば勝ちだな。
◆◇◆
俺が一区切りの150層までの敵を殲滅し終えたのは、それから2時間ほどが経過した時だった。
途中魔力回復ということで休憩を挟んだので、少し時間が伸びた。別に休むまでもなく、『
それにしても、パラメータの封印を緩めているからか、未だ方法を変えなくとも一瞬で魔物の殲滅が可能だ。
まぁ元々魔法が強すぎるから、迷宮内では基本的に武器だけでやってるんだが。
そして、その魔法で殲滅した敵の数は最早数え切れないほど───とはいえ数えようと思えば数えられる───になっている。
これだけ倒したのだ。レベルなど有り得ないほどになっていそうだが、『過負荷の指輪』装備中は、あろうことかレベルが一切上がらないのだ。
スキルも取得こそするが、レベルは上がらない。
つまり、俺はレベルが指輪を装備した時の106の状態から一切変わっていないのだ。
……なんだろう、急激に萎えてきたな。
これ、経験値は蓄積されているのだろうか。もし全ての経験値が消え去ったとなれば発狂物だが、もし蓄積されているなら、膨大な量の経験値が溜まっているはずだ。
そもそも、レベルアップのシステムもよく分かっていないのだから、経験値という概念があるかもわからんのだが。
魔物の魂や魔力を吸収してるとかだろうか?
それとも強さを表したのが『レベル』で、一定以上強くなることを『レベルアップ』と称しているのか。
いや、もし一定以上強くなることをレベルアップとするならば、それではレベルとパラメータに個人差があるのはおかしい。
いやいや、個人個人にレベルの規定がそれぞれ設定されているのなら、やっぱりおかしくないのか。
だが、レベルが上がった途端パラメータが増えるという事実を見ると、やはり段階を踏むことにより、この世界の存在は強くなるということだ。
しかしそれでは、『過負荷の指輪』による、レベルアップはしないがパラメータが微上昇するという効果は説明がつかない……。
つまりパラメータとレベルは絶対的な関係ではなく、あくまでレベルが上がることによりパラメータも上がるだけで、パラメータはレベルアップ以外でも上昇する?
そうすると今度は、毎日厳しい訓練をしていたにも関わらず、パラメータが一切上昇しなかった勇者達の説明がつかない。
だが勇者と普通の人は違う。なんせ、この世界に来てから、俺たち勇者は、全くと言っていいほど体型に変化がなかった。
筋肉がついた様子もなければ、痩せた様子もない。太っている者は太ったままで、俺も特に地球の頃と変わった感じはしない。
あれだけ激しい運動をしているのだ。目に見えた変化がひとつは出てもいいだろうはずなのに、それにも関わらず変化がない。
そこから考えられるのは、勇者は一切肉体が変化しないという可能性だ。不老不死ではないが、不老、いや『不変』の存在である。
それを考えれば、筋肉痛などのものが無いのも説明がつく……だがそれだと怪我もしなくないか?
いや、ファンタジーだし、肉体の成長は無くなるが、怪我などはするというのも有り得るか。多少の矛盾程度はどうにかなりそうだ。
しかし、やはり可能性の域は出ない。痩せることも無く、増えることも無いということは、成長しないという事だ。
訓練によるパラメータの増加が見込めない。
つまり、その点だけでいえば、勇者は普通の人よりハンデを抱えていることになる。
───いや、もしかしたら、見た目に変化がないだけで、訓練をすると、次のレベルアップ時のパラメータの増加量が増える可能性もある。
そう考えると、勇者は見た目には出ないが、ちゃんと成長していることになる。
だから変わった様子がないのか。
この世界は地球とは違う。召喚される過程で身体の造りが変わっていてもなんらおかしくはない。
おかしくはないが、少し怖い。
ともかく、肉体の成長は全てパラメータによる数値となって現れる。地球の頃とは身体の造りが根本的に異なるから、筋肉はつかないし、痩せることも太ることも無い。
全て数値に変換しているということか。
そして、この世界ではパラメータの数値がそのまま力となる。
この世界の住人はそんなことないだろう。もしこの世界の住人全てが勇者のように、痩せることも太ることもないとなれば、全員生まれた時点で体型が固定されてしまうことになる。
まだ勇者の身長が伸びるのか伸びないのかは分からないが、これで身長も変化がないとなれば、確実にこの世界の住人と勇者の身体の造りは違うとわかる。
……いや、そうか! いや、身体の造り云々とは違う話だが。
もしかしてだが、レベルアップ時にパラメータが増えるのは、あくまで数値としてだけ。レベルアップをしなくても、パラメータの数値に変化がなくとも、実際には少しずつ強くなっているのではないか?
その証拠に、この世界に来て初めての訓練の時、素振りすらまともに出来ず、体力切れになったものがほとんどだった。
それが二日目以降には耐えれる者が続々出てきて、一ヶ月経った時には、パラメータに変化が無いにもかかわらず、模擬戦を数戦やっても問題が無かった。
スキルにより、剣の扱い方が上手くなったから、余計な体力を使わなくなったというのもあるだろうが、それだけでは説明出来ない結果だ。
つまり、レベルアップした時に、それまでで鍛え上げられた筋力などが初めて数値として反映されるだけで、数値=その人物の強さとは捉えられないわけだ。
例えば、学校で体力測定をやったとして、中学一年の握力の結果が30キロだったとしよう。
そして中学二年の結果は40キロ。
記録されるのは、中学一年の記録と二年の記録だけで、そのあいだの過程は記録されない。
しかし、握力が増えているのは事実で、突然10キロも上がった訳では無いだろう。
徐々に増えていって、測った時が40キロだったに過ぎない。
レベルアップによるパラメータ上昇も似たようなものだ。徐々に増えていて、レベルアップ時にその時点での強さが記録されているだけだ。
レベルが上がれば上がるほど、1レベル毎のパラメータの増加量が増えていくというのも、次のレベルアップまでに時間がかかる分、前回より多く訓練をしているから、と考えられる。
それに加えて、単純にレベルアップしたことで増えるパラメータもあり、レベルアップ時のパラメータの上昇方式は、
(レベルxy分のパラメータ上昇量)+(訓練した分の上昇量)=(レベルアップ時の上昇量)
ということになるのではないか。
個人による成長に個人差があるのも、当たり前だ。力の付き方は人それぞれで、同じ訓練をやったとしても、他の人と同等の効果が得られるとは限らない。
『過負荷の指輪』の、体に負荷をかけることによって、レベルに関係なくパラメータを上昇させるという効果を持つ【鍛錬】も、なんとなく仕組みがわかった。
恐らくレベル(正確にはパラメータ)が上がれば上がるほど、訓練の効果は薄くなっていくのだろう。
300キロのダンベルを持ち上げられる人が、30キロのダンベルを持ちあげていても、大した訓練にはならない。
だが、『過負荷の指輪』は、常に30キロのダンベルしか持てない状態にすることで、限界に挑むこととなる。
その分身体にかかる負荷は大きくなるので、訓練の効果をダイレクトに受け取れる。
そして、俺は30キロのダンベルしか持てない状態なのにも関わらず、普通に100キロ以上のダンベルを持っていたのだ。
身体への負荷は尋常じゃないだろう。というか、本来なら持てないのだから、おかしいのだが。
しかし、訓練だけしていてもレベルは上がらない。今のところ、魔物を倒すというのが俺の知っている唯一のレベルアップ方法だ。
結局何でレベルアップしているのかは分からないが、少なくとも魔物による何かというのだけは理解出来た。
後はそこをおいおい考察していけばいいのだ。
魔物の魂や魔力を吸収しているのか。
理由などない、『経験値』という、単純にこの世界のシステムだからなのか。
ここまで分かれば、一個人の、高校生の考察としては十分だ。
仮説ではあるが、可能性は高いだろう。
「ま、訓練は欠かすなってことがハッキリわかるな」
目に見えない微々たる効果かもしれないが、少なくとも無駄ではない。
いや、訓練はしっかりとするべきだ。どの程度の効果があるのかはまだ分からないが、やった方がいいのは確実だ。
なんだか大きい問題を解明したような気分で、スッキリした。
ルサイアでも、ここでも、レベルやパラメータについてはほとんど情報がなかったからな。この世界の人は、それらを自然なものとして捉えているようだ。
「……って、結局経験値が蓄積されてるのか分からないな」
ふと、何からこんな思考に至ったのか考え、俺はガクリと頭を垂れて零した。
途中からあまり関係ないじゃないか。俺が知りたかったのはレベルアップがどういうシステムなのかっていうのと、結局経験値が蓄積されてるのかってところだ。
やはりそこは、後で指輪を外してみなきゃわからないようだ。全部溜まっていた場合、一体どの程度レベルが上がるのやら。
急にレベルが上がって、その反動で体が動かないとか意識が無くなるとかにならなければいいが……安全なところで今度外してみるか。
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