第57話 やはりおかしい
危ない、投稿忘れるところだった
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修行は長く厳しいものか?
答えは否。否である。
だってやたらと強い俺自身、まず目立った修行をしてないから。
レベルアップで強くなったが、少なくとも俺は苦痛に感じていないし、実際苦痛ではないだろうから、厳しいものでは無い。ストレスレスである。
この世界に来て1ヶ月半。そろそろ成長止まるかと思うが、『過負荷の指輪』をつけているにも関わらず、実感出来る程に成長している。
というか……そろそろ、『スキルの感覚を[完全記憶]で覚えていて、それをトレースしているから』という理由だけじゃ、パラメータ以上の力を出せていることの説明ができない気がしてきた。
最初は確かにそうなのかと思った。姿勢、重心、力の入れ方等々、スキルの補正で働いていた様々な要因の下、俺の腕力や脚力は、パラメータ、つまり数値以上の力を出しているのではないかと。
だけど、昨夜阿修羅を倒したことを考えると、やはり明らかにおかしい。
衝撃を完全に受け流した? 壁を登った?
いやいやいや、俺はどんな超人だ。少なくとも、スキルの感覚をそのままやっているだけじゃ、不可能だと思う。
どんなに達人でも、ある程度の筋肉がなければ受け流すなど無理なはずだし、壁を登るのなどもってのほかだ。
重力の概念さんはどこに行きました? 重力に逆らえる力を身につけたのでしょうか。
いくら俺でも、技術だけで何万というパラメータの差から放たれる攻撃を完全に受け流すなど不可能だろうし、それでも受け流せているということは、感覚的なものではなく、何かしらの要因でパラメータが強化されていることにほかならない。
スキルは確かに封印していたから、[パラメータ倍加]の効果の可能性はないだろう。スキルがちゃんと封印されているかを確かめたことがないから、そこに関してはなんとも言えないが、今は封印されていると仮定する。
とすれば……あれか。有り得るのは、[過負荷の指輪]の『レベルアップをしなくてもパラメータが上がる』的な、【鍛錬】という特殊効果によるものか。
度重なる激しい運動により、見た目ではわからないが筋肉がついたか。これは、パラメータと実際の筋肉量の関係に触れることになるが、まぁそれは置いておいて。
それとも、未だ詳細が確認できない《称号》によるものか。
いや、それならそもそも、ステータスという存在自体が謎であり、あからさまに都合のいいように作られすぎている。
パラメータという項目に書かれた数値が、実際の力と合っているのかは分からない。高ければ強く、低ければ弱い、その程度の比較しか出来ないのではないかと。
そもそも1の筋肉量での筋力は1であって、それなのにパラメータはそれに関係なく、【筋力】という数値が高ければ、例え筋肉量が1であっても、100の力を出すことが可能というのがおかしいのだ。
明らかに何かしらの力が働いてるじゃん。
レベルという概念も、よく分からない。倒した相手の何かを吸収して強くなる、という説明で納得出来ないこともないが、やはり都合のいいようにできている気はする。
スキルも、ステータスに表示された瞬間から突然強化されるなんてどんなシステムだと。[剣術]を覚えた瞬間に剣の扱いが上手くなり、[火魔法]を覚えた瞬間に火魔法を扱えるようになる。
おかしい、おかしいよな。
ステータス、パラメータ、レベル、スキル……どれもこれも、地球にあった異世界物のラノベに出てくる、『作者がキャラクターの強さをわかりやすいように表現した』ご都合主義のようなものだ。
そんな設定が、この世界では当たり前のようにあるなんて、出来すぎている。
確かに、俺の異世界に対する知識はそういうラノベが元で、俺も異世界なら『ステータスがあって当然』という先入観、固定観念があった。
普通に考えて、そんなゲーム的なことが実際にあり、フィクションであるラノベの内容と、本物の異世界が同じであるなんて、そっちのほうが馬鹿げているのにだ。
……いや、思考が関係ない方向に向かっている。一旦区切ろう。
とりあえず、だ。現在の俺は、更にパラメータを下げなければ、強くなっていく一方であって……。
パラメータの調整が面倒くさそうなことを、俺は野村君と試合をしながら結論として導き出してしまい、小さくため息を吐いた。
……俺の思考力も、一体全体どうなっているのかね。
戦闘中にも関わらず、パラメータの差からして、そこまで余裕のはずもないのにこの複雑な思考。
誰か、その道の専門家を呼んでください、と俺は心の中でふざけてみたりしていた。
……気づきかけた事は、厄介事の臭いがしたために、一旦放置して。
◆◇◆
野村君との訓練は、野村君の体力切れにより終了した。
転じて、俺は呼吸を一切乱さずに倒れ込んだ野村君に手を差し伸べてあげられるのだから、周りから見たらともかく、俺からしたら不自然極まりない。
俺の【体力】今はレベル10程度なんですけど!
レベル50は恐らく超えているはずの野村君が、流石に今の俺より【体力】が低いということは無いだろう。それにスキルも加味すれば、さらに。
肺とか心臓とか、わからない所で色々鍛えられてるんですかね、やっぱり。
「うへぇー、やっぱトウヤさんには勝てねぇや」
「まぁね。俺だって
きっとギルドマスターとかが聞いたら白い目を向けられるだろう言葉を躊躇なく吐く。謙遜などしたら逆に野村君が可哀想だろう。
まぁ、多分この言葉も、俺のステータスからしたら謙遜なのかもしれないが、俺はやはりまだ、この力を真に自分の実力とは呼べないんだよな。
毎日鍛錬を繰り返していれば、いつか納得出来る日が来るのかね。
取り敢えず野村君は疲れ切っているようなので、そのまま休憩に入らせ、さぁ次だ。
「トウヤさん、どういうことですか!?」
雫ちゃんでも、御門ちゃんでもなく、陽乃ちゃんの方に行ったのは全くの偶然で、意図的なものでは無い。
単純に距離的に近かったからで、本当に何の他意もない。
勿論、こんな風に問い詰められる覚えもない。
陽乃ちゃんに声をかけようとしたら、何故か俺は問い詰められていた。
「えぇと、陽乃さん? 唐突すぎて何が何だか……」
「もう、とぼけないでください! 雫ちゃんや紫希ちゃんの魔法が上手くなってるのは何でですか!」
おおう、なるほど。
俺は必死の形相で詰め寄る陽乃ちゃんに、納得顔で頷いて見せた。
「いや、まぁ俺が訓練したからだけど……でも何で問い詰められてるんだか」
「なんか2人が強すぎるから、お荷物みたいに感じちゃって嫌なんですよ!」
その理由はとても私見的だが、そのお陰でこんなに俺が言われている理由もわかり易かった。
いや、半ば見当違いも良いところだが、本人からしたらそんなことを言ってられないほどに、差を感じたのかもしれないな。
とはいえ、それは飛鳥ちゃんや野村君も同じはずなのだが……あの二人は気にしないタイプのような気もするから、なんとも言えない。
「オーケーオーケー。安心してよ。元々今日は同じ訓練を陽乃さんにやろうと思ってたからね、丁度いい」
「え? ホントですか! ぃやったー!!」
だから俺がこうやって言えば、陽乃ちゃんの前向きな性格的に直ぐに思考方向が変わると踏んだのだが……今はその(本人にいえばとても失礼だが)チョロさに助けられたな。
別にやましいことは何も無いし、俺が責められる言われも本来なら無いはずなのだが、何となく責任を感じてしまうのは何故か。
俺が善人だから、と自分で思うのはさすがに躊躇われた。
「まぁでも、訓練結果は個々人によると思うから、そこは覚えておいてね。大丈夫だとは思うけど、陽乃さんの才能に依存するところもあるからさ」
「大丈夫です! 私、魔法の才能はあると思いますから!」
相手が初対面だったら俺も『その自信はどこから出てくるんだ』と聞くところだったが、陽乃ちゃんに関して言えば何度か戦闘の様子を見ているし、そこから来る自信だと理解出来た。
さてと、陽乃ちゃんがどこまで覚えられるかが決め手だが、そこは俺も補助をするとしよう。
雫ちゃんと御門ちゃん、飛鳥ちゃんと来ているから、やり方はどんどんスムーズになっていく。
必然的に後者の方が効率が良くなっていくのだが……まぁ、流石に飛鳥ちゃんを超えることは無いだろう。
さてと、そんなところだが、早速やっていきますか!
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