第37話 色々と拗れてる?


 すいません、また結構お待たせしてしまいました……。


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 雫ちゃんとの訓練を終えると、最後は御門ちゃんとなる。


 「さて、何やる? と言っても、やることは限られてるけど……」

 「剣と魔法両方共です。私で最後ですし、どうせなら時間いっぱいまで練習しませんか?」


 下から俺の目を覗き込むようにする御門ちゃんに、少し考える素振りを見せる。


 現在の時刻は、まぁ大体であるが、地球で言う10時台のはず。昼まで残り約2時間が残っていると考えていい。

 魔法の訓練は雫ちゃんにやったのと似たような感じにするにしても、まぁさっきよりもスムーズにできると仮定して約1時間半。

 これに御門ちゃんの魔法の才能でプラマイされる感じだ。正直、雫ちゃんがたった二時間ちょいであそこまで成長するとは思わなかったのだ。


 スキルで言うと、レベルが2から3は底上げされていると見ていいのだ。流石は勇者というか、驚くべき成長力だ。

 とは言え、今はあれが限界とも見えるが。あれ以上行くには経験とか知識とか技術とか、それら全部が必要だから、一朝一夕に身につけられるものじゃない。


 ……って、俺が言えたことじゃないか。経験に関しては少ないはずだけど、それを技術でカバーしてるのが俺です。

 なんで技術がそんなに高いのかは一向にわからないのだが。


 だから、剣に割く時間は30分程度になるのか……少しアンバランスになりそうだが、ギリ行けると見る。


 「じゃあ、魔法をやって、時間が余ったら剣術の練習をしようか」

 「分かりました。じゃあ早速、何したらいいですか?」


 ワクワク、と言った様子で、少し興奮気味に急かしてくるので、落ち着きなさいという意味を含めた苦笑いを向けてから、俺は御門ちゃんの隣に移動した。


 女の子特有の香りがする範囲まで近寄ると、ふと、脳裏に少し前の飛鳥ちゃんの言葉が過ぎる。

 御門ちゃんが俺のことを気にしてるとかどうとか言っていたな、確か。今のところ、そんな素振りはないが……。


 俺とて男。そういうことを、本人からではないとしても、可能性レベルであったとしても、知ってしまうと、やはり意識はしてしまう。


 思考を訓練モードに上手く切り替えられたのか不安になりつつも、俺は早速とばかりに始める。


 魔法の訓練というと、同時発動数も増やしたいが、やはり強い魔法を無詠唱で扱えるようになるのが優先だ。


 前衛だと詠唱破棄でも、その時間意識が持っていかれれば危険だからな。無詠唱でも結局イメージに意識を持っていかれることに変わりはないが、口を動かす手間が省ける分、多少は変わるし、相手に魔法を悟らせないことに繋がる。

 

 とはいえ、内容自体はあまり変わらない。雫ちゃんは発動数を増やすことに重点を置いたけど、御門ちゃんの方はイメージを確固にすることに力を入れるとかの変化ぐらいだな。

 ただ、雫ちゃんと違う点を言うなれば、御門ちゃんの反応だろうか。



 それは例えば、魔法のイメージを明確にしようと、『想像共有イメージシェア』の魔法を使おうとした時───。


 「じゃあ御門さん、手を貸してくれるかな?」

 「は、はい……」

 「いや、別にそんな緊張しなくていいから」

 「うぅ……その、面と向かって手を繋ぐのって、少し恥ずかしくて……」


 こんな感じで、初心な反応を楽しめたりする。手を掴んでいるだけで、手を繋ぐとはまた違う気がするが、御門ちゃんにとっては同じらしい。


 君、本当に免疫ないね。初対面の時の樹みたいになってるぞ。あいつも結構人見知りだったからなぁ元は。

 

 んでまぁ、二回目以降は、緊張と恥ずかしさで手汗をかいたら嫌だからという理由で、代わりに額を合わせることになったのだが……


 「うぅ……」

 「御門さん、絶対こっちの方が恥ずかしいと思うんだけど」

 「い、言わないでくださいっ。今必死に耐えてるんですからっ!」


 鼻と鼻が触れるような距離。息がかかってこそばゆいし、とにかく顔が近い。そんな状態で御門ちゃんが平常でいられるわけもなく、オーバーヒート状態だった。


 だがしかし、可愛いことに変わりはなく、俺も結構役得感はあった。ここまで初心だと色々イタズラしたくなるが、控えておく。

 さり気なく魔法で温度を下げたのは、そんな理由からだ。


 ……ちなみに結局その後は額同士ではなく、俺が御門ちゃんの額に手を当てればいいことに気づいたため、そうなった。

 ようは肌に直接触れていればいいのだ。



 他にも、練習のために何度も無詠唱を行っては不発をし、その度に消費される魔力を補給する際。

 一番の問題はここだと言っても過言ではないほどに、これは大変だ。


 「んっ……や、こ、これ……ちょっと……」

 「落ち着いてね。一応体を変に動かすとこっちも操作が乱れちゃうから」

 「いや、でも、これ……ひゃっ!?」


 果たして、魔力補給というのはどんな感覚が流れているのか。一つ言えるのは、身を捩り、声を抑えようと我慢する御門ちゃんを見て、これは他の人の前では使えないと思ったことだ。


 雫ちゃんにやった時もそうだが、今は魔力を補給すると言っても、少しの回復程度のものだ。もしこれが、枯渇してからの全快、というのだったら、恐らく今の比ではないだろう。


 ……何がとは言わないけども。これからは魔力は自力で回復するのに専念させた方が、一応彼女達にとってはいいのかもしれない。

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