第7話 雑すぎる実力検査2
多分あちらからしたら何が何だかというところだろう。試合時間は1分にも満たなかったのだ
それでも、どうやら俺の実力をしっかりとわかった様子。胸を借りますと言った心意気が見える。良きかな良きかな
「次は私です!」
エントリーナンバーツー!水上飛鳥ちゃん(16)
その姿勢から察するに魔法使いと見た
「魔法使いであってるのかな?」
「はい。えっと、私は近接戦闘は出来ないので、あまり実力は見せられないかと……」
「あぁ、安心して。俺はここから動かないから、好きな様に撃っていいよ。勿論、俺を倒すつもりで」
「そ、それは流石に……」
「大丈夫。第一階級舐めちゃいけない。いつでもいいよ」
「……分かりました。じゃあ、遠慮なく行きます!───『ライトバインド』!」
おっと、動かないと宣言しているにも関わらず拘束魔法、しかも2連ときた。慎重なのか、臆病なのか
中級光魔法『ライトバインド』。虚空に魔法陣が浮かび、そこから光の縄が射出され、俺の体を拘束する
「『
拘束して、絶対逃がさないようにしてからの広範囲魔法か。殺しに来てるねぇ
上級光魔法『
空から降り注ぐ魔力の光が俺の身体を包む。本来ならここでダメージというか、身体が焼けたり痛くなったりするのだろうが……
「えっ?」
一方で、いつまで経っても俺の身体には全く変化はない。魔法はもちろん発動している
それに困惑した飛鳥ちゃんだったが、すぐに思考を切り替えたのか、次の魔法の詠唱を始めた
ウチの勇者達より全然練度高いなホント。拓磨と良い勝負じゃないか?最後に見たの一週間以上前だが
「『
非実体でダメなら実体か。いい判断じゃないかな。防がれた要素がわからない以上は試していくしかないもんね
上級水魔法『
飛鳥ちゃんにより生み出される、冷気の玉。それは俺の近くの地面に触れた途端、一瞬で俺を氷で包み込み、氷山を誕生させた
「今度こそっ!」
どうやらガッツポーズをしてるらしい。倒せなくても、これで拘束できたと考えているのだろうか
───それは流石に甘いかな
ピシッ!ピシピシッ!!
「え?嘘!?」
突如として中心にヒビを入れ、次の瞬間には崩れ去る氷山。無論やったのは俺であるのだが
氷の中からでも飛鳥ちゃんが見えていたのは[千里眼]、音は[超聴覚]
魔法をくらっても無事だったのは、自身の周りに高密度の魔力を纏っていたために、魔法が俺の魔力と衝突、現象としての力を保てなかったからだ
無論普通はそんなこと出来るわけが無いが
縄は魔法で固定されているが、その俺の場合物理で破壊できます。こう、良くある筋肉で縄を引きちぎる感じで
こちらも、普通はそんなこと出来るわけないが
そして氷山を壊したのは、元々多少動ける程度のスペースを魔力で確保しておき、内側から物理で破壊したのだ
「取り敢えずこれで終了かな。それと、最後は油断しちゃダメだよ。こうやってあえて油断させる可能性もあるんだから。それと、魔法の詠唱破棄を頑張れるようにってのかな?魔法の効果や重ね方、戦闘の運びはいいと思うから」
一応申し訳程度に忠告。ウチの勇者より全然練度が高いからなんとも教えにくいが、それでもそのぐらいはね
「は、はい……ありがとうございました」
渾身の魔法が打ち破られたからだろうか。飛鳥ちゃんは肩を落としながら戻っていく
……少しやりすぎたかなと反省。そりゃ全力で魔法を使って、見た目上何の対応もされないで無傷でいたら落胆もするよな
次はせめて魔法で防ぐことにするかな
エントリーナンバースリーは陽乃ちゃんのようです
「宜しくお願いします!」
どうしよう。キラッキラとした目で見られてるんですが。気のせいかさっきよりもキラキラ度が増してる気がする
「うんこちらこそ。好きなタイミングで始めていいよ」
一々合図を待っているのだと時間的に遅くなる。この後はさっさと迷宮に行くことにしているのだから
「じゃあ……行きます!」
素直な突進。野村君よりは遅いが、普通の人にとっては十分驚異的なスピード
手に持っている獲物は槍。槍は樹相手にしか戦ったことないが、俺も技術自体は割とあります
所詮我流でしかないが
「『
出すのは同じく槍。突如として虚空から1m80cmほどの槍が出現する
陽乃ちゃんが俺に肉薄すると同時、いきなり手元に現れた槍に目を見開く……が、構わず突きを入れてくる
本当に練度が高いなぁと感心しつつ、出したばかりの槍を高速で動かして、陽乃ちゃんの槍と共に上へと上げる
「っ、まだ!」
バックステップで少しの距離を取り、穂先による連突き。それを柄と穂先で的確に防ぎつつ、俺も少し下がる。なんというか、パラメーターはともかく、槍の技術的には多分樹より少し下なんだろうが、戦闘慣れしてるな本当に
俺が下がるに伴って、追いかけるように距離を詰めてきた陽乃ちゃん。槍を身体の周りで回して、勢いをつけてからの斬撃が繰り出される
「『フラッシュ』!」
対応しようとした途端、目の前に突如として閃光が生まれる。それは絶大な光量を伴い、至近距離からの視認をすれば、一定時間の失明もあるだろう
近接戦闘をしながら魔法の使用。初級魔法だが十分効果的だし、光に指向性も持たせてるから自分には効果が薄い。相当強い相手でないと、いまのはダメージをもらうかしていただろうな
だけど残念。こっちの魔力感知能力は、詠唱破棄程度じゃ感知できちゃうんだなこれが。無詠唱は必須だよ?
無詠唱でも反応できるかもだけど
無詠唱で使用した初級闇魔法『ダークネス』で、自身の目に届く一定量以上の光を遮断する。擬似的なサングラスだ
それにより視界を確保しておき、迫る槍を防御
「そんなっ!?」
「これで終わり」
そしてそのまま槍を上空へと打ち上げて検査終了
「陽乃さん、戦いながら魔法使うなんて凄いね。それも詠唱破棄」
「あ、い、いえ、それほどでも……それに、トウヤさんの方が凄いです。最後、無詠唱の魔法で防いだじゃないですか」
落ち込む前に、褒める、ということで俺は陽乃ちゃんを褒めてみたのだが……
返ってきた言葉に、俺は驚愕する。まさか俺が魔法を行使したことに気づかれるとは思わなかったのだ
俺の魔力隠蔽は、[魔力支配]へと統合されたことでさらに強化されている。無論本気で隠蔽しているわけではなく、あくまで周りに迷惑にならないようにと隠蔽しているだけだが、それでもあの戦いの中で気づかれたのは驚きで……
やはり、流石は勇者と言うべきか
「うん、陽乃さんは本当に凄いよ。保証する」
「そ、そうですか?……えへへ」
心からの俺の賞賛に、陽乃ちゃんはそう聞いた後、照れくさそうに笑った。どこかラウラちゃんを彷彿とさせる笑い方だな
そしてキラキラ度が増したんですが。貴女の双子さんの方もね!視線で分かる、分かっちゃうんだよ!
トコトコと帰っていく陽乃ちゃんを見ながら、俺はどうにか視線でそう訴えた。聞き届けられた可能性は皆無である
なお、別に隠したいわけじゃないか、
「どうも」
「こちらこそ」
次はぶっきらぼう君の黒澤君だ。まるで不良のような目付きと姿勢。だがまだドジっ子の可能性が(ry
「好きに行って良いのか?」
「勿論だとも。いつでもいいし、何をしてもいいよ」
少し見方を変えれば、馬鹿にしているとも取れる発言だなと今更ながら気づく。だが短時間で実力を見るなら何でもありの方がいい
「じゃあ、遠慮なく!!」
言うやいなや、早速とばかりに黒澤君は走ってくる。そのスピードは野村君よりも速い。明らかに移動系のスキルは持っているだろう
手に持った獲物は大剣。まさに見た目に合うというか、ピッタリだ
「『
ということで、俺も大剣を出すことに
大剣なんか一回も使ったことないが、ルサイア騎士団からぬす……じゃなくて借りてきて良かったわ。あー後で返しに行かないとなーうんうん。借りパクは良くないしねー
「嫌な趣味だな!」
「いや、そういうつもりじゃないんだけどな」
恐らく相手の装備に合わせることだろう。黒澤君が言ってくるが、苦笑いでやり過ごす
ついでに言葉とともに叩きつけられる大剣も受け流す。剣術と似通ったところがあるのだろう。初めて使うにも関わらず、ある程度は体が動く
「チッ!幾つ武器スキルを持ってやがる!」
「どのぐらいだろうね」
俺がいくつも武器を使うからだろうか、そんなことを言われるが、生憎俺は
まぁ、この試合が終われば取得するだろうけど
「『
暫く受け流しをしていると、何かの掛け声。それと同時に、黒澤君の速さが増す
いや、それだけじゃない。叩きつけられる力も、振る速度も、反応速度も、全てが先ほどの二倍近くになっている
パラメーターを上げるスキルなのだろう。これは恐らくグレイさんを凌ぐか?技術はともかく、グレイさんと戦った場合互角となるか、もしくは……
「おらよぉ!!」
でも甘いんですがね
受け流すも、力と反射神経にものを言わせて軌道が無理やり変えられる大剣を、更に防御。反射神経だけならば俺は元々超人的だった。動体視力もだけど
スキルで強化されるまでもなく、俺の反射神経はこの世界でも十分通用、というか上回るほどだったのは流石に異常だと思うが、ともかく、反射神経で俺についてこれる者は極わずかしかいない
それは、『バーサーカー』というスキルで強化されている黒澤君でも、だ
だからこそ、どんなに速い攻撃も、それ以上の速度で防御や避けることが可能だ
「はい、終了」
粗方把握したところで終了。10人も控えているから結構雑なのは、もはやご愛嬌としてほしい
「黒澤君は俺みたいなテクニック系統の相手に弱いかな。でも逆にそれ以外の相手なら捩じ伏せられる」
「チッ!んなもんわぁってる」
まだ話したばかりだが、割と素直っぽいかな?うるせぇ!って言うよりは、元々分かってるって言ったし、欠点を自覚できてるということか
「テクニックを学ぶなら俺がいつでも相手してあげるから。まぁ気長にね」
「ふん!」
鼻を鳴らして戻ってく黒澤君だが、まぁ根はいい奴だと思いますよ。こう、師匠とか先生とかにその内『アンタには、世話になったな』みたいな事言ってきそう。そしたら感動して泣いちゃうかもな
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