第5話 小動物と魔力操作
「よし、訓練はここまでだ! この後は各自昼食を取った後、休憩してくれ!」
グレイさんの一声により、みんなはその場に座り込む。
拓磨は立ってはいるが、肩で息をしている状態だ。やはりステータスの差かな? いや、元の身体能力も影響している感じか。みんなステータス同じだもんな、俺以外。
そう言う俺はどうなんだって?
この通り、普通に立ってますよ。
いや、ちょっと疲れてはいるんだが、別にそこまでじゃない。ただ、剣術はレベルアップしてないな。やっぱりそんなに甘くないか。
俺は、また明日も頑張ればいいかと思いつつ、周りと同じように座り込んでいる樹の元へいく。
「樹、大丈夫か?」
「はぁ、はぁ、はぁ、疲労で死ぬ…」
おいおい大袈裟だな。死ぬってのは昨日の俺みたいな体験をしてから使うものだぜ。
「叶恵と美咲も、大丈夫か?」
「も、もう無理~」
「はぁ……刀哉君はなんで大丈夫なのよ……」
俺は樹の様子を見た後に2人を見にいく。どうやら叶恵は樹と似た感じ……いやもっと酷く、美咲は膝に手をついてはいるが、立っている。
「まぁ、体力だけはあるんだ」
「それだったら化物ね……」
さらっと流すが、レベルアップしたことを話せばゴブリンに襲われたことも話さなくちゃならないからな。いらない心配はかけたくない。
「んじゃ、俺は先行ってるから」
「い、行ってらっしゃ~い…」
叶恵の弱々しい送り出しと共に俺は食堂に行く。ここから食堂までは5分ほどかかるのだが、[完全記憶]のおかげで道順は問題ない。
このスキル、俺の予想だと、常に役に立ちそうだ。
食堂で昼食を一番に食べ終わり、俺はメイドに図書館の場所を聞き、図書館に行く。
図書館へは5分ほどでつき、中に入るとそれはもう膨大な数の本棚があった。
暇つぶしとしては十分だろう。いや、多すぎて何から読むか困るほどだ。
「……」
「……(じー)」
そしてカウンターから向けられる無言の視線。
「えっと、何か?」
「……別に」
視線の主はここの司書と思われる少女。その目はいわゆるところのジト目というやつだ。
ただ、ジト目がデフォルトなのだろう。何かやらかしてジトーではなく、人を見つめる時にジトーとなってしまっているのだろう。
割と好みです。どうでもいいけど。
「……(じー)」
「……えっと、魔法に関連する本ってどこだ?」
俺は無言の視線に耐えることが出来ず、口を開く。少女の背が小さいため、敬語ではないが、こっちの方が違和感がない。
「……Bの棚は全部魔法関連」
「え?あの量全部?」
俺は、アルファベットのBと書かれた本棚を見る。縦に5列、横幅4mほど。見た感じ1列80冊以上ある。
「(コクリ)」
俺が聞くと少女は頷く。マジか、アレ全部魔法関連。読むの大変だな。
「そうか、ありがとうな」
「……別に」
俺がお礼を言うと少女はぶっきらぼうにそういい、今まで持っていた本に目を向ける。
俺はこれ以上話すのは迷惑かなと思ったので、Bの棚にいく。
───うっわ、辞書みたいな大きさの本とかある。あんまし時間はないから軽いものを見ていくか。
俺は背表紙で魔法を軽く学べそうな本を探す。後は試したいことがあるからな。
すると、『魔法』というシンプルな本があった。
俺はその本を持ち、机に持っていく。何となく目に入ったのもあるが、直感でこれだと思ったのだ。感はあながち馬鹿にできない。
シンプルだからこそ、入門としてはいいかなとも思ったが。
本を開き、文章を全て目で追う。読んでいる訳では無い。あくまで追っているだけだ。
1ページに10秒もかけずに次に行くのを繰り返して、10分ほどで本を読み終わる。
「んーっと、実験は半々だな」
俺は伸びをしながら本の内容を思い出す。すると、本のページの文を明瞭に思い出すことが出来た。
俺がやっていたのは完全記憶を利用して短時間で本が読めないかというものだ。
結果は半分成功半分失敗かな?ページの文を記憶することには成功したが、俺は文を追っていただけで読んでいた訳では無いので、内容を覚えていない。なので記憶の中でもう1度本を読み進める必要がある。
まあ、ページをめくったり、字を読み直したりする必要がないので早くなるにはなるのだが。
そこで『魔法』の作者名に目をやる。ダルビス・リレイヤ、この人が書いた作品を読み進めてみようか。
他にも出しているか分からないし、本の内容もまだ分からないので有用かどうかは分からないが、ここでも直感だ。
俺は後20分ほど残された休憩で内容を把握し終わり、魔法の訓練に移った。
◆◇◆
「私が君たちに魔法を教える、ルサイア神聖国宮廷魔術師団団長、マリー・アザベルだよ。宜しくね」
そう挨拶するのは、如何にも魔術師ですという格好のローブを着た、赤髪の女性。
案内された場所は城の敷地にある宮廷魔術師団という団の兵舎? のような場所、そこの一室の、大学みたいに席が上から段々となっている場所だった。
宮廷魔術師団は騎士団の魔術師版のようなものらしく、騎士団と仕事を半々でこなしているらしい。
「今日はまずは魔法についての勉強をしてもらって、その後時間があったら魔法の発現の練習をするよ」
勉強という言葉を聞いて顔をしかめる全員。だよな、異世界に来てまで勉強とか嫌すぎるわ。まぁ魔法の発現の練習という言葉にやる気を出すのはご愛嬌である。
「じゃあ魔法についての説明ね。
まず魔法とは、普通の人には出来ない超常現象を引き起こすもの。何も無いところに火や水を出したりするって言うのが一番わかりやすいかな。
魔法の形や威力は全部術者のイメージ次第。想像力の豊かさが魔法の鍵ね。勿論イメージがあればいいってわけじゃないけど、最初は想像することが重要よ。
魔法には属性があって、基本属性の火、水、土、風。そして上位の光と闇、どれにも分類されない無。他にも特殊な属性が幾つかあるけど、基本的にはこの七つの魔法がメインとなるの。
ただ、魔法はスキルとして出てないと
魔法の発現の速さは各々の才能に左右されるわ。その代わり、努力すれば一応4属性位は扱えるようなるの。才能があれば早く発現して、しかも全部の属性使えるってことにもなるから」
ふむふむ、事前に予習をしておいた通りだな。『魔法』の本にも似たようなことが書いてあった。違うのは、マリーさんが省いた特殊な属性の記載がきちんとされてはいたな。
俺が読んだ本には、特殊な属性は『回復』『時空』『重力』とあった。この三つは扱いが難しいというか、発現するのすら難しいために特殊として扱われている。
例えば回復。実は光属性の魔法でも回復魔法は使える。魔法はイメージで効果が決まるため、光属性から癒し、なら回復と繋げられる。
あれ? なら回復属性は要らねぇんじゃね? とくるが、そうでもない。
光属性の回復は、ドラ〇エで言うホ〇ミやベ〇イミだと思ってくれ。回復属性の回復魔法は、ホ〇ミやベ〇イミと同じ消費MP(魔力)で、ベホ〇ズンを使えると言ったらわかりやすいだろうか?
消費魔力は変わらず、範囲と回復力が絶大に増加するのだ。
まぁ、最終的には両方覚えればいいのだが、特殊属性はイメージが難しく、センスによるものが大きい。なので、特殊として区別されている。
持っている人は殆どが先天的なものによるため、イメージの仕方なども記載されていない。
と、まだ説明は続いているな。
「次に魔法の発現方法。魔法を使うには、魔力というものが必要なの。魔力は何処にでもあって、私たちの身体の中にもあるの。個人差はあるけどね。
まずは、自身の身体の中に魔力の感覚を捉え、それを体の外に出したり動かしたりできれば、後はイメージで使いたい属性の魔法を使うだけ。最初は火がオススメだよ。
もしかしたら何人かは既に魔法がスキルとして出てたりするかもしれないけど、魔力の使い方がわからないと出来ないから、結局は練習しなきゃいけない。
簡単に聞こえるけど、普通は魔力の感覚を捉えるのがとても難しいの。要するに間違い探しで、普通なら1枚が見本、もう1枚は間違いがあるものだけど、この場合は見本が無いの。だって生まれつき体の中にあるんだから、どれが間違いかなんて分からないでしょ」
なんか、そう言われると凄く難しそうに感じるな。俺達の場合、地球に魔力がなかったから、間違いはすぐに分かる、というのも難しい。
なぜなら、今の時点で誰も自身の体の中に魔力があることを自覚できていなかったからだ。
まぁ、ここの現地民よりは幾分か楽かもしれないが。
「だから、発現は難しいわ。まぁこれも才能、センスによるものが大きいのだけど、早い人はすぐに出来たり、逆に遅い人は何週間何ヶ月とかかったりするから、中々発現できない人は自主練をしっかりしてね」
その後は、それぞれの属性についての話の後に、マリーさんに実際に魔法を見せてもらい(火がボワーってなった!ボワーって!)、そこで発現練習の時間になった。残ってるのは後20分ほどだと思う。時計が無いので体感だが。
「意外と時間が余ったから、この時間内に魔法が使えるようになる子がいるかなー?」
まるで小学生のやる気を引き出すための言い方みたいだが、今の俺達はその言葉で一気にやる気を出す。
よし、俺も本気でやろう。異世界ものの小説の知識、全部引き出してやらぁ!
まずは魔力の感知。俺の小説知識では、魔力は体の中を循環している。つまり動き回っている。
この動き回っているというのを、心臓の脈動により、血液と共に血管を巡っているとして小説では表現されているのが多い。
あくまでその小説の作者が書いた想像のものだが、あながち間違っていない気がする。俺はそれにならって、身体の中の血液を意識する。
(………ん?これか?)
5分位ずっと集中していると、何か、何とは言えないが、何かがあるのが分かった。こう、ぼやぼやっとしてる感じ? なんか、イメージとは違う。
取り敢えずこれを魔力と仮定。この魔力を体の外に出すらしい。
(むむむむむ!)
取り敢えず気合でやってみたが、よく分からん。そもそも出てるのかが分からないからない
んー、あ、これも血液として、怪我した時みたいに血が流れるのをイメージしてみるか。
ただ、普通に血が流れるのだとまた違う気がするので、こう、身体の中にある魔力を身体の中で1箇所に固めて、それをじわじわと出す感じにしてみよう。
最初だから、ばっ! と出したりはしないでおこう。
擬音は気にせんでくれ。説明が難しいだけだ。
(えーと、これを固めて、手の先を覆う感じ?)
外に放出というより、手の先に集めて、それで手を覆う感じにイメージをする。
(ん?)
5分ほど集中していると、途端に魔力を感じられるようになった。手の先が魔力に包まれているのがよく分かる。
俺は、いつもの展開かなと思いつつ自身に鑑定をする。
───────────────────
夜栄刀哉 17 男
レベル2
【生命力】320
【魔力】350
【筋力】145
【体力】140
【知力】155
【敏捷】150
【器用】150
【運】300
スキル
武器術
[剣術Lv.1]
魔法
[魔力感知Lv.1]
その他
[速読Lv.1]
ユニークスキル
[成長速度上昇Lv.-][因子適応Lv.1][完全記憶Lv.-]
[鑑定Lv.4][偽装Lv.-]
異能
【吸収Lv.-】
───────────────────
ふむふむ、急に魔力が分かるようになったのは[魔力感知]のおかげか。地味に[速読]とか増えてるけど、どうせ本を読んでいた時だろう。
さて、確か次はこれを操作するんだったか?
俺は手を包んでいる魔力を動かす。さっき身体の中でやった時より難しかったが、コツを掴んだのか5分ほどで成功。それを何となくで棒状にし、俺の顔の前あたりで振ってみる。
ブンブン!
実際にこんな音がなっている訳では無いが、俺の顔の前で確かに棒が振られているのが分かる。
と同時に、今度は急に魔力がスムーズに動かせるようになる。これはあれだろ? 鑑定をしろってことだろ?。
───────────────────
夜栄刀哉 17 男
レベル2
【生命力】320
【魔力】350
【筋力】145
【体力】140
【知力】155
【敏捷】150
【器用】150
【運】300
スキル
武器術
[剣術Lv.1]
魔法
[魔力感知Lv.1][魔力操作Lv.1]
その他
[速読Lv.1]
ユニークスキル
[成長速度上昇Lv.-][因子適応Lv.1]
[完全記憶Lv.-]
[鑑定Lv.4][偽装Lv.-]
異能
【吸収Lv.-】
───────────────────
もう俺の場合これがお約束だな。でもその場その場でステータスを確認できるのは良いな。鑑定最高。
「はい、今日はここまで。この後はご飯食べてお風呂入って終わり。また明日ー」
どうやら丁度終わったらしい。今ので20分もかかったのか。
「刀哉、どうだった?」
「そうだな、魔力を動かす所まではいった」
「いや嘘だろおい!? 俺なんか全然だぜ……」
どうやら分からなかったらしい。仕方ないから後で教えてやるか。
「刀哉、樹、どうだった?」
「お、拓磨。俺は全くダメだわ〜」
「俺は魔力を操作するところまで行ったな」
「嘘だろ!? 俺だってまだ魔力が分かったくらいだぞ。早いと思ったんだがな」
どうやら拓磨は少しできたらしいな。俺は小説の知識あってだが、拓磨は何も無いところからだろ? 凄いな、天才は違うわ。
「刀哉君、樹君、拓磨君、どうだった?」
「その顔だと樹君は全然で、拓磨は魔力を感知したとか? 刀哉君は普通に出来てるんでしょ」
「ご名答。凄いな、よく分かったな?」
「勘よ」
まさかの勘で全員の進行状況を当てた美咲。直感やばいな
「そういう美咲達はどうなんだよ?」
拓磨が気になったのかそう聞く。なんかやけになってるみたいに聞こえるぞ?拓磨
「私はなんか変なのが身体の中にあるな~て分かった!」
「私もそんな感じね」
「うっわ俺だけかよ何も出来てないの」
あははは、と皆で笑いながら食堂に行く。仕方ない、どうせだから今日は樹に授業してやるかな? 時間が余ったら魔法を使おう。
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