25話 少女の出会い
私の父は厳しかった。
私の家、レイベルト家は古くから続く騎士の家系で天職に着く前から騎士になるための厳しい訓練を毎日していた。
同い年くらいの子供たちは楽しく遊んでいるのに私は父と一緒に鉄の剣を朝から晩までずっと振っていた。
よく訓練が嫌だと文句を言ったら、父にぶたれたものだ。
「そんなことだから貴様は弱虫なのだ!」
それが父の口癖だった。
体中には父との組手でできた痣がそこらじゅうにあり、手には剣を振ってできた血豆で沢山だった。
私がそんな生活を耐えられていたのは母のおかげだった。
毎日ボロボロになって帰ってくる私を見て母は暖かいお風呂とご飯、それから優しい温もりをくれた。
「ごめんねマキア……ごめんね……」
私を抱きしめながら母はよく泣いていた。
私が15になって、天職が狙撃手だとわかると父の指導は一層厳しくなった。
ある日、父は私を魔物が沢山いる森の奥深くに連れていき一人で街まで帰ってくるようにと言われた。
鉄の剣、弓、矢が50本と少しばかりの飲水を渡され私は森に置いて行かれた。
とても怖かったのを今でも覚えている。
「もうやだ……!」
天職のせいで私の人生はもうぐちゃぐちゃだ。生まれてきてから一度も子供らしいことも女の子らしいことなんてしたことがない。
なんで私だけこんな辛い思いをしなきゃいけないの?
そう思わずにはいられなかった。
家柄がなんだ、天職がなんだって言うんだ。
私は自由に生きたかった。
"なら、生きればいいじゃない"
そんなこと無理、だって私は……。
"無理かどうかなんてやって見なきゃわからないじゃない"
「え?」
誰もいないはずの森で誰かに話しかけられた。
"こっち、こっちだよ"
声が聞こえる方へむくとそこには一つの弓が無造作に木の上に引っかかっていた。
「もしかしてあなた?」
半信半疑で問う。
"そう、私だよ。あのさこの木から下ろしてくれない?木の上はもう飽きたのよね〜"
弓の言うとうりにぶら下がっている弓を下におろして何となく地面に置く。
「うん、ありがとう!助かったわ!!」
突然、弓が置いてあったはずの場所に桃色の髪が特徴的な女の子が現れる。
「え!どっどういうこと!?」
驚きが隠せず大きな声が出てしまう。
「私はアルコ、あなたのお名前は?」
弓だった女性は自己紹介をして名前を尋ねてくる。
「マキア……マキア=レイベルト……」
「そう、よろしくねマキア」
女性は私には眩しすぎる笑顔でそう言う。
それが私とアルコの出会いだった。
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「どこ行ったのアルコ〜!!!」
ただいま私はソニックハニーに絶賛追いかけられていた。
アルコが訓練だとか言って10匹ほどのソニックハニーの群れにちょっかいを出したらこれだ。
言い出しっぺのアルコはどこかに落としてしまい。一人で必死に逃げるしかなかった。
「だからやめようって言ったのにー!!!」
そんな悲痛な叫びが森に谺響する。
少女が彼らと出会うのはもうすぐの事だ。
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