創私記

宮又ゆうも

第1話 始まりの7日間

 私は唐突に意識を持った。今までの事も現在の事も関係なく、意識を持った。

 意識を持ったが、周りには何もなかった。『自分』と言うモノもなく、ここには私の意識だけがあった。

 しばらくの間何もせずに居たが、胸の奥が急に苦しくなった。だから私は他へと移ってみることにした。

 だがどこにも何もない。移った先には私の意識が出来上がるだけ。

 より胸の奥で苦しさが増した。

その苦しさの理由を考えた。そして何もない、認識するものがないことに苦しさを感じるのだと思った。

だから私はまず私が『居る場所』を確かにした。この場所を『空間』とした。

しかし苦しさは治まらない。

次に私は私自身を確かにした。自らが見れる形を作った。そこに意識を収めた。

苦しさは少し和らいだが、「もっと」と言うモノが意識で生まれた。

故に私は作り続けることにした。

初めに『空間』に無数の塊を作った。その中で綺麗な物を選んだ。

その後に近くの大きな物へと念じると、見えにくかった空間が、ある程度見えるようになった。私はそのことを『光』とし、いくつもの塊を『光』とした。そして他の見えにくい場所を『闇』とした。

次に綺麗な物の全体には青いモノが覆っていた。それを『水』と名付けた後、一部を綺麗な物を覆うことに使った。覆った部分を『空』とし、次へと移ることにした。

綺麗な物は他と違い、青一色で固い部分が無かった。そこで他の塊から固い部分を取り、綺麗な物へと足した。足した部分を『陸』、分かれた青い部分を『海』、足した部分に乗った青を『湖』とすることにした。

だがそれだけでは足りないと思い、『陸』の部分に緑色の物体をいくつもの塊から付け足した。持って来たモノをそれぞれ『草』、『花』、『木』などと付けた。

そこまで来て私は気付いた。綺麗な物で『光』が当たらない部分があることを。

私は解決するために綺麗な物を回し、『光』が当たるようにした。ついでに綺麗な物で『光』が当たっている部分を『昼』、当たっていない部分を『夜』とした。

最後にと『海』と『陸』と『空』で生活する者達を創った。

そして全てのモノが多く増えるようにした。

青く綺麗な物は、色とりどりで賑やかな物へと変わった。

ただ、私は色々に創ったが自分の苦しさと「もっと」をなくすことが出来なかった。

なぜと思う気持ちは、自分の中で生まれた答えによって消えることになった。


 ……自分と同じ形、力を持ったモノを創ろう。


 私はすぐさまに行動に移した。

 創り出したのは自分の形を元に外見を装わせた。

 すると心の中が満たされるのを感じた。

 そこで様々な者を創った。外見が違う者。力が違う者。どれもかれも変えて創った。

 創った『それら』に話しかければ、こちらを向いて、


「(ペコリ)」


 頭を下げる『それら』が、眼前に広がった。

 同じに創ったが、どうしてか私の事を敬うことをするそれら。

 しかしその光景を見て、私は今までにない感覚を覚えた。苦しいではなく、満たされるでもなく、心にずっしりと溜まった感覚を覚えた。

 その感覚に、自分の『口』と名付けた部分の角が上がった。

 それから創った『それら』に綺麗な物の、様々なモノや周辺の塊などの監視や守りにつかせた。

 しばらくの間、私は休んだ。

 そして休んだ後に『それら』の所へと出向いてみた。

 どんなことをしているのか。そう気になったから。

 きっと楽しく過ごしているだろう。そうして『それら』を創り、綺麗な物を任せた私に感謝されるに違いない。

 しかし『それら』の所で受けたのは、


「ここは私の担当なので居られなくても大丈夫です。」

「貴方様が出向かれることはございませんので、ごゆるりとして下さい」

「……………………」


 丁寧に帰された場所。作業をしながら相手を出来ないとされた場所。頭を下げたまま、返事をすることすらされなかった場所。

 他の『それら』でも様々な対応を受け、初めに彼らの頭を下げる『それら』に受けた感覚はなくなった。

 なくなり、違う感覚が自分の中で広がった。


 ……これは私が創ったのに。それなのに!


 そう思い、私は綺麗な物から離れた。

 そして、私はあの綺麗な物と同じ様な塊を探した。

 それはすぐに見つかり、私はそのまま行動を起こした。

 私はあの綺麗な物と同じものを、あの私が創り上げた素晴らしき塊と同じように。

初めから創り出した。

 形は少々違うし、大きさも比べ物にもならない程に大きいが同じように創った。

 『海』と『陸』と『空』で生活する者達を創り、そこで止めた。

 私は三つの場所で生活する者達だけとの日々を過ごすことにした。

 その者達との意思疎通も出来る。困ることは何も無い。

 だから長い時をそのまま過ごした。


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