彼女が髪を伸ばしていた理由。

ろくろだ まさはる

彼女が髪を伸ばしていた理由。

友人の女性がツイッターで髪を切ったと呟いていた。


それを見た僕は「バッサリ切りましたね」とコメントを返した。


ただ、気になったのは一緒にアップされていた写真で、

恐らくこれから切るであろう彼女の長い髪が、

表現はアレだけど、ある程度の本数で束ねられタコの足の様になっていた。


不思議に思ったけど、こういうヘアカットの方法もあるんだな、と。

そんな風にしか思ってなかったから、そこに付いていたハッシュタグを

気にも留めていなかった。


暫くしたら、彼女の友人がツイートにコメントしていた。

ショートになった彼女を褒め、これからの季節にピッタリだと。


僕も読みながら、うんうんと同じ感想を抱いていたけど、

その友人の書いた一文が気になった。

「ヘアドネーションの為だったんですね」と。


ヘアドネーション?


そういえば、彼女が呟いた時につけていたハッシュタグが

#ヘアドネーション だったはず。


僕は彼女の呟きに戻り、#ヘアドネーションをクリックしてみた。


ヘアドネーション、それはつまり寄付でした。


何らかの事故や、先天性だったり、罹ってしまった病気などで

頭髪を失ってしまった子供たちに、寄付された髪の毛で

医療用のウィッグを作り、無償で提供する為の活動でした。


彼女はその為に髪を伸ばしていました。


ヘアドネーションの為には、髪の長さが最低でも31センチ必要です。

使用できる長さまで髪を伸ばしていたと知って、

彼女の優しさに涙が出ました。


そんな活動がある事も、彼女がその為に髪を伸ばしていた事も、

何も知らず、何も気に留めず、ただツイートを眺めていたのに。

その裏側にはこんなに素敵で、思いやりがある世界が隠れていたのか、と。


彼女が伸ばしていた髪を切りました。

その髪で、子供たちの笑顔が増える事を、僕は知りました。

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