モノクローム
創也 慎介
プロローグ
撃ち放った弾丸が見事にターゲットの眉間に食い込み、貫通する。
大穴を穿たれた“それ”は力なく崩れ去り、黒一色の肉体が煙のように消え去った。
戦闘服に身を包む“彼”はライフルの銃口を持ち上げたまま、一歩後ずさる。
ぎゅっという音と共に、足裏で生まれた熱が足を伝って
ひどく肉体が
白と黒、そして灰に染まったアスファルトの上から、またいくつもの黒色が湧き上がってきた。
ある者は染み出し、またある者は空間にポッと突然、湧き出てくる。
きりがない――再び襲いかかってくる“それ”をライフルで一掃しながら、背後へと駆けていく。
いくら弾丸を叩き込んでも、どれだけ退けようともまるでやつらの勢いが衰えることなどない。
このまま、この街で延々と戦いを繰り広げるなど、不可能だ。
もとより、たった一人で戦争をする気などない。
彼にとってこの街で、やらなければいけない事は明確なのである。
景色を薙ぎ払うようにライフルの一斉掃射を浴びせ、
背後で再び“それら”が湧き出る気配があろうとも、もはや目もくれない。
駆けていく彼の眼前に、無数の“黒”が
決して足を止めず、再び銃口を持ち上げて引き金を引いた。
暴れる銃身を歯を食いしばって押さえ込み、放たれる牙の軌道を“それ”に向け続ける。
まるで雄叫びのような、あるいは獣の
両手、腕、肩にがっしりと固定し、歯を食いしばった。
街の中を駆け巡り、襲いくる“黒”を退け、ついに彼はたどり着く。
荒廃した石造りのビルに、確かにその輝きを感じ取っていた。
光は部屋の中央に
間に合った――部屋の中に飛び込み、銃を下ろす。
駆け寄ってみると、宝石は陽の光を受けてまばゆく輝いていた。
ずっと追い求めたその光に、しばし目を奪われてしまう。
ゆっくりと、彼は両手を宝石に伸ばした。
色が失われたこの世界の中で唯一、鮮やかな銀色に光る“それ”を掴むため。
たった一発の発砲音が、その身を貫く。
痛みはすぐにはやってこない。
ただ背後から、鈍器で肉体を打ち付けられたかのような、重く鈍い衝撃が彼を襲った。
えっ、と声をあげ、腹部を見つめる。
どす黒い血液が
もはや鮮やかさを失い、ただの黒い液体と化したそれを追うように激しい痛みがやってくる。
おもむろに振り返ると、陽の光を背負って誰かが立っている。
その手には拳銃が握られ、銃口からは白煙が上がっていた。
ヘルメットに覆われているせいで、その表情は分からない。
だが、それが何者かは本能で理解した。
だからこそ彼はわなわなと震え、そして
震える指先が、再び腕にぶら下がった連鉄の牙に力を宿す。
終われない、こんなところで――彼の放った
乾いた空気の波は相変わらず、無機質で無色な“街”の中へと響き渡った。
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