拝啓、あなたのおかげで戦争が無くなりました。あなたのおかげで健やかに暮らすことができております。あなたのおかげで沢山の思い出が出来ました。ですので、どうか私たちをもう憐れまないで下さい

宮又ゆうも

プロローグ



 プロローグ     出会いへの終わり



 運が無かったのだと、幸樹は思う。


 生きていくうえでの運ではない。人生に対する運だ。

 自分は裕福でもなく貧しくもない家に生まれた。長男で一人っ子だ。両親も自分のことを可愛がってくれた。

 学校生活も悪くは無かった。

 勉強も運動も中の上で悪くは無い。そのため成績も良かった。彼女もいた。

 だから生きていくことで、運は悪くなかったと言える。


 けれども人生はそうではなかったのだ。


 ただ運がなかっただけ。本当にそれだけなのだ。

 誰しもが遭うかもしれない悲劇。

 その『かもしれない』ものが多く起こってしまった。運がなかったのだ。

 そう。運が無かった。

 自分のせいでもない。他人のせいでもない。

 ましてや存在するのか分からない神のせいでも。

 誰のせいでもない。

 ただ、本当に運が無かっただけ。

 だから、と幸樹は口に出して前置きする。

 


 今度こそ、一緒に死のう。

 


 そう呟いて、幸樹は病院の屋上から飛び降りた。







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