オレたちの学校で
うちはイタチ
第一怪
朝起きたらまず朝食を二人分作り、弟を起こす。それから二人で食べ、顔を洗い歯を磨く。制服に着替え鞄を持ち弟と二人学校に行く。これが約五年前から始まった朝のルーティン。弟とはいえ、双子なのでいつも一緒だった。五年前、あの交通事故が起きるまでは四人で暮らしていたのだが、オレ達がおばあちゃん家に遊びに行っていたあの日。いつもより迎えが遅くて三人で心配しながらも寝てしまったあの夜、親父と母さんが死んだ。交通事故で即死だったそうだ。それからは、こうして今のように二人で生きている。もう家事にも慣れた。まあ、二人で母さんの手伝いをしていたから、大丈夫だと思ってはいたが、全部やるのは大変だった。長くなってしまったが、今現在のオレ達兄弟の状況だ。だが、今は誰も分かりやしなかった。これからオレ達の周りで起こる色々な事件のことなんて・・・。
「楓、起きろ。ご飯出来たぞ。」
「分かった。起きるって。」
「先降りとくぞ。」
「うん。」
こんがり焼けた表面にバターの塗ってあるトーストに半熟の潰せば黄身が出てくるような作るのが難しい目玉焼き。それが柚木家のいつもの朝食だ。
「おはよう」
「ん、楓これそっち運んどいてくれるか?」
「ん?お弁当?」
「おーい、大丈夫か?今日から弁当だぞ。」
「あ、そっか。ありがと。」
「じゃ、とっとと食べて行くぞ。」
「うん。いただきます」
「ご馳走様」
「美味かったろ?」
「うん。でも、兄さんのは、いつも美味しいじゃん。」
「そうか?ありがとな。よし、学校行くぞ。」
「わかった。」
鞄を持ち今日はプラゴミの日なので二人でプラゴミ片手にゴミ収集所に行ってから学校へと行く。まあ、これもいつもの事だ。最近は楓がゴミを持ちオレが鞄を持つという事になる。だが今回は、何故かゴミを持って行ってくれと言われた。前にもこんな事があり、何故か聞いてみると、「兄さんに重いものはなるべく持たせたくないから。」という。なんとまあ可愛いのだろう。やはり、オレの弟は天使だ。みんなは、兄弟がいると喧嘩ばかりするって言っていたが、オレ達は喧嘩という喧嘩をしたことが無い。(せいぜいあっても今日は、風呂どっちが先に入るかだ。オレが先に入っていいと言っているのに兄さんが先入ってと言う。本当に可愛すぎる。まあ、結局のところ母さんに二人で入れば?と言われ二人で入っていた。)
「兄さん、兄さん。」
「ん?どうした、楓。」
「もうそろそろ学校着くよ?考え事?」
「ん?あぁ。まーな。」
「そっか。あ、樹ー!」
源 樹。普と楓の幼馴染で親同士も仲が良かった。
「お、普と楓じゃねーか。おはよう」
「おはよう。今日お前日直じゃなかったか?」
「おーい、記憶力大丈夫か?俺昨日日直だったんだけど?」
「あー、悪ぃ昨日色々あったんだよ。」
「そうか。ま、体調気をつけろよ。」
「お前に言われると、変な気分だな。」
「いや、一応俺保健委員だから。」
「あ、そうだったな。楓、今日夜飯なんにする?」
「うーん、カレーかな?」
「ん、わかった。買い物行ってきてくれるか?」
「いいよ。いつもんとこ?」
「あぁ。悪いな。」
「あー、お前さん達も大変だな。」
「まあ、な」
「今日俺ん家来るか?」
「え、いやいきなりは、ダメだろ」
「ま、そう言うと思ってな親には、言ってんだ。だから、来いよ。来なかったら、親スゲー心配するから。」
「分かった。じゃあな。」
「おう。昼休み、いつもんとこだろ?」
「あぁ。楓、行こうぜ。」
「うん。じゃあ、またね。樹。」
「おう!昼休みな!」
─ガラガラ
「お、普と楓じゃん。おはよう。」
「「ん、おはよう。」」
「普ー!数学教えてくれー。」
「樹、頼む。歴史教えて。」
いつもの朝、特に何も変わらない。この状況がいかに幸せだったなんて、この時は気付いていなかった。まだ誰も、これから起こる事なんて、知らなかったんだから。
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