　シンの行方について上手く誤魔化した二人は、“アーティフィシャル・アーク“という情報の集まる街に向け、長旅となる準備と経路をツバキに確認する。

　「そのアークシティってところまではどうやって行くんだ？」

　「幾つかの村や町を経由していくんだ。最初のうちは馬車もあるだろうよ。けど、途中からは歩いて抜けなきゃならねぇところもある」

　「乗り継ぎみたいなこと？」

　各村や町を乗り継いでアークシティまで向かう。ツクヨの言う乗り継ぎは、現実世界からやって来た二人には分かり易い例えだった。歩く距離は多いだろうが、要は電車の乗り継ぎと似ている。

　「う〜ん・・・その乗り継ぎってのがどんなのか分からねぇけど、まぁそんなところだ」

　「それじゃぁある程度まとまった金がいるな」

　「それなら大丈夫！レースの賞金があるからね。丁度よかったじゃない、レースに出て」

　「これも俺のおかげだな？感謝しろよ？ミア」

　「たまたまだろ・・・。まぁ、ありがとう。じゃぁ問題なく次の目的地までは行けるってことだな？」

　便利な移動方法を採用すれば、それなりにかかるものがある。偶然か必然か、ミア達は当分のお金には困らない程の賞金をレースで得た。彼女らがレースに出ることを意識し始めたのも、ツバキのおかげだった。

　結果的に、開会式で現れた彼女らの記憶にしか残らない黒いコートの男が持ち込んだアイテム、異世界へのポータルが要因となった訳だが。

　「じゃぁ俺が馬車の手配をしてきてやるよ！その間にお前らは、旅の準備でもしておけよ」

　「何でお前がそんなに先走ってんだよ」

　「そりゃぁアークシティに早く行きたいからさ！俺にとってもあそこは憧れの街なんだ。情報だけじゃねぇ・・・珍しい機材や部品が、きっとあちこちにあるんだろうなぁ〜」

　ツバキの嬉しそうに話す姿を見て、ツクヨがミアに耳打ちするように話す。

　「こういうところは子供らしくて可愛いんだけどね」

　「そうかぁ？アタシにはどうしてこんな風に育っちまったのか・・・。やっぱ海賊に囲まれて育ったからなのかねぇ」

　粗暴な態度と口ぶりは、元々海賊であったダンピアや彼の元を訪れる海賊達の影響だろう。だが、そんな彼の秘密を知るミアとツクヨで、その反応にも違いが生まれていた。

　馬車を手配すると走り出してい行ってしまったツバキを見送り、二人は彼に言われた通り旅の準備をする為、街でアイテムや装備の買い物を済ませることにした。

　いつ帰るか分からないシンの準備は諦め、各々現段階で装備可能な武具を買い揃える。するとそこへ、丁度手配が出来たとツバキから連絡が入る。

　「さて、向こうも準備できたみたいだな。そろそろ出発とするか！」

　「いよいよ次の旅だね！海も凄かったけど、やっぱり私には陸が合ってるかもなぁ〜」

　ホープ・コーストに居た、レースに参加していた多くの海賊が既に海へと帰って行った。その中には、ミアと話したジャウカーンも含まれている。

　街の様子が、また普段の港街へと戻っていく。

　人の往来が多く賑やかな街。海を渡り、新たな大陸へとやって来たミア達。これまでの大陸とは、生息モンスターも違えば手に入る素材や鉱物も変わってくる。

　情報を求める彼らの旅は、自然と大きな街や場所を目的地とし、それだけ大きな問題に巻き込まれる事となるだろう。だが、彼らが求めるものは、大きな問題にこそ関わってくるもの。

　現に彼らが巻き込まれた聖都ユスティーチでの大事件は、WoFに異変をもたらしている何かに関わっているであろう黒いコートの者達の耳にも届いていた。

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