先に先に

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先に先に

 高齢者が増えたこの街には道のゆく先々には、倒れないように杖が至る所においてある。国はそこに転んだ時のために、壁という壁に腰から膝の高さにスロープを付けることを義務付けた。また、スロープにつかまることができなかった時のために、道に立った姿勢に戻れるようにトランポリンをはめ込んだ。

 この対応について街頭インタビューを行ったところ、

「こんなんあったってケガする人なんて減らんわ。それよかおばはんの膝にサポーターつけときゃええねん」

ということがあったので、テレビ局はサクラを仕込んで

「さすが、我ら国家の対応は素晴らしい。私たちのことを考えてくださって筆舌に尽くしがたい」

というメッセージに変えておきました。以上現場からでした」

テレビを見て、

「なんでこいつらは、いわなくてもいいことをいったんだ」

と、たかしは思った。

「なあ、おまえ、お前の料理はいつ食べてもおいしいな」

と、父は言った。母は、

「もちろんよ、あなたがそう言うと思って私がつくっておいた料理を捨てて、前もって頼んでいたウーバーイーツで料理を宅配しておいたのよ。あら、やだ。もう8時よ、あなた、お仕事行く時間でしょう」

「大丈夫だよ、お前がそう言うと思って何日か先に出社しておいたんだ、と、思うだろうから先に退職届も出しておいたんだ」

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