歴女が知識で戦う異世界物語
糸井嵜諸常
第1話
はぁ、今日も大学疲れたなぁ。
そう思いながら帝武鉄道大川駅の改札を降りる。新宿にある大学から乗り換え無しで1時間かかるここのマンションを借りた理由はただ一つ、家賃の安さだった。
歴史にハマったきっかけは単純だった。当時流行っていたF○Oというゲームにハマった事だ。気に入ったキャラをWikipediaで調べているうちに、ゲームに隠された史実要素に惹かれていった。
今ではすっかり重すぎる趣味へとなっていた。アルバイトで稼いだ金の出来るだけ多くを趣味に使うが為に、他に使う金をカツカツに切りつめていた。
気づけば華の大学生活も一年が過ぎ、彼氏どころか同性の友達すら数人しか居ない状況だ。
でもそれを全く悲しくは思わない。私には趣味があるから。
ドアの鍵を開け靴を脱ごうとすると、部屋の中から人の気配がした。だけど一人生活の為に人が部屋にいるなんてありえないはずなのに。わざわざ部屋まで訪れる友達も居ない。恐怖で足が竦む。声がでない。逃げなければ行けないと脳が語りかけるが足が動かない。
やっとの事でドアを再び開けた所で男の怒鳴り声が聞こえた。
「誰だぁ?」
一言だった。だがそれはタダでさえ体が動かなかった私には致命的だった。
腰が抜けた。マジで腰が抜けるってこういう感じなんだ。くだらない事を考えないと気が狂いそうだ。
男の声が迫る。もう男が何を言っているのかさえ恐怖で脳は理解しない。
ヒシヒシと迫る死の足音に恐怖で涙が止まらない。
「ィヤァ」
声にもならない様な声が、私のこの世で発した最後の声になった。
目が男の手の先にある鈍い鉄の反射を捉えた。
あぁそういえば今日、誕生日だったな。最後に考えたのは意外にも平凡な事だった。
人生の最期は存外あっさりしたものだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます