The Espionage Strategy
高橋志旅
序章 背信
西暦2045年、日本は戦後百年を迎える。
平和であるためには、平和に安住してはならない。平和になろうとし続けることで初めて、平和は実現するのである。
2051年、日本国、神奈川県、小田原市。ありうるかもしれないもう一つの未来。
私は古ぼけた研究施設の裏にいる。窓が開いているおかげで中の声は丸聞こえだ。
「ここを新たな基地に?日本は初めてですが、なかなかいい土地ですな」
「ええ。すべてはここから始まります。ここが我らのグラウンドゼロです」
中にいるのは二人の男。松田信秀とベイカー長官。反政府組織とCIA。二つの長が集結していた。
「CIAで公安庁のエージェントが射殺されたと聞きましたが、まさか奴らに気づかれたのでは?」
「いや、問題はないよ。遺体を調べたが何の痕跡も出ては来なかった。おおよそ何か勘違いして我々の本部に乗り込んだのだろう」
唇を強くかんだ。鉄の味がジワリと広がる。
「瑞月ちゃん、あなたの死は無駄にはしないわ」
私はそうつぶやいて静かに夜の森へ消えた。行き先は仙台。日本解放軍の本部だ。名も捨てよう。セレッサ、これがいい。沙由、あなたと私は違う。私は私。ほかの誰でもない。
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