旅立ち

旅を続けるために

・同じ町には5日間以上滞在しない。


・通った町の数が両手で数えられるうちは足を止めない。


・ホテルを利用するときは同行者をみつける。


・親切が通じないときは賄賂を躊躇うな。


・友人を作ってはならない。一瞬の暖かさがやがて飛び火になる。


・旅の記録は必ずとる。足跡は命綱であり、命取りだ。


・未来のことは絶対に記してはならない。




今日の教訓を生かし、この7ヶ条を旅の定めとする。




--------------


追記:


今後、百容堂には直接美術品を送らないことになった。


電信でいったん百容堂に連絡を取り、各地の仲介業者に買い付けた美術品を送る流れになる。


それと、あの絵は今後十年間、市場に出さないでくれるそうだ。


百容堂の主人曰く、これだけ大ごとになったのだから、もう父の名前は出さないほうがいいだろう、とのこと。商売は難しくなるかもしれないが、生業か、旅の継続か、よく考えることだ、と。


ああ、そうだ。認めたくないけれど、百容堂の主人が言ったとおりだ。




私は自由になったつもりで同じ軌道を飛び回る、ただの伝書鳩にすぎないのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る