交歓
冬が来る
冬が来る
翼有る少年は冬が嫌いだ
腹いせに近くの村へ火の鳥を蹴落とし、
暖をとり、食事も済ませた
一人、生き残りの村人がいる
興味をそそられて地上に降りると、
翼の少年と背丈が近い人間の男の子
少年はおもしろがって、みずからの翼から羽根を一枚むしり取った
純白の羽根で血濡れの男の子の顔を撫でてやると、
たちまちケガが癒えてしまった
男の子は合掌して神様に感謝するようにおじぎをした
翼の少年は人間ごときの感情には心が動かない
男の子に背を向かせ、
ひざまずかせて、
彼の血の混じる羽根の根の方を後ろから挿し込んだ
悲鳴は一日ごとに
少年は毎日一枚ずつみずからの羽根を男の子に捧げるのだった
やがて冬が終わり
雪解け水が川に流れ、堕ちた村へ辿り着く頃
かつて翼の有った少年は
空へ還る
男の子はやわらかな陽を浴びてほほえんだ
力を無くした少年を
僕の捧げ物は永遠に失われることがありません、と少年に告げる
帰る場所を失った二人は、
それでも生の歓びを交わすのだ
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