サッド・シティー
とおりまい(著)
インモラル・コミックス
インモラル社は十八歳以上の読者を対象にしたコミックや小説を主に手がけている出版社……ありていにいえばエッチな本を専門にしている出版社です。本書はインモラル社が昨2018年に出版したもので、著者のとおりまい氏は複数の出版社、レーベルでひっぱりだこの売れっ子エロ漫画家として知られています。本書は著者の作品の中で最大のベストセラーであり、発売日から一年が経過した2019年11月現在で、十二万部の売れ行き、二十六版を重ねています。
にもかかわらず、本書は業界のライターからは「意味不明な作品」として気味悪がられています。
本書は十八禁コミックとして発売されたにも関わらず、セックスやそれを連想させる描写が一切存在しないのです。内容はアメリカ近郊と思われる架空の都市、サッド・シティーの中央駅の風景を朝の通勤から終電まで延々と描写し続けるというもので、読者の性欲をかきたてるような刺激的な格好をした女性・男性共に一切登場しません。ただ列車が到着、乗客が乗り降りする様子が淡々と繰り返されるだけなのです。
エッセイ漫画でもここまで単調ではないだろうと思われる退屈さ。にも関わらず、本書はすさまじい売れ行きを見せています。いったいどのような魅力を発散するものなのか?参考のため、以下にamazonのレビューを記します。
改札にICカードをかざすシーンで、なぜか射精してしまった。何度読んでも謎の興奮に包まれる。自分は金属フェチでも電子機器フリークでもないはずだが、なぜここまで性欲を持て余すのか、全く判らない。
記述を確認する限り、本書は間違いなく「エロ本」として機能しているようです。一部の評論家からは、「インクやトーンの一部に読者の性欲を亢進させるサブリミナル効果のようなものが施されているのではないか」との指摘も寄せられましたが、現在の広告研究では、サブリミナル効果はそこまでの影響を読者に与えるものではないとの結論が出ています。
著者のとおりまい氏はこの作品について沈黙を守り続けています。現在でも精力的に新刊を発行し続けている作家ですが、それらは通常のわかりやすいエロ漫画であり、本書のみが謎の作品として読者を困惑させています。
(このレビューは妄想に基づくものです)
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