遊歩道の下で

 芦辺晴美(著)

 ミュンヒハウゼン文庫


 交通事故死を題材にした短編集。

 

 著者は小説投稿サイトやKDP、自身のHPでも自作を発表していますが、確認できる限り、全て交通事故死を題材にしたものです。

 その数、計250編。同じ題材を元によくここまで内容の異なる物語を執筆し続けられるものだと感心させられます。


 なお著者のブログによると、自身が交通事故の加害者であったり、知り合いを事故で亡くしているというわけでもない、との話です。

 実際、交通事故を題材にしているという共通点はあっても、事故を発生させる社会状況を声高に批判する作品もあれば、事故をきっかけにして恋愛が始まる作品などもあり、その内容はバラエティに富んでいます。


 著者曰く、「一つの題材を極めることで、小説執筆全体の極意のようなものを掴もうと考えた。最低でもこの題材で千作は仕上げたい」とのこと。

 実際、近年発表された作品は、事故の瞬間・直後の臨場感、破壊された金属を記す文体の執拗さ等がすさまじく、ある種の神聖さのようなものまで漂ってくるほどです。


 まるで画家や彫刻家のように、一つの事項にこだわりつづける職人的な作品集。文体練習や描写力の向上に熱心な創作者が読めば、多大な示唆を得られることは間違いないでしょう。




(このレビューは妄想に基づくものです)

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