幻術師
丹沢継春(著)
(ミュンヒハウゼン文庫)
本書は、著者、丹沢継春が捜索した架空の言語で記述されている。
安易なライトノベルなどで見られる、文字の組み合わせをカタカナやアルファベットに対応させた即席の創作言語ではない。文法も、発音規則も、全て独自に考案されたものだ。
驚くべきことに、本書には日本語訳がない。架空言語と日本語を対応させた単語リストさえ添付されていない。かわりに場面が転換するごとに挿絵が付与されている。読者は辞書さえ存在しない言語で書かれた物語を、挿絵と単語を見比べながら読み進めることを強いられるのだ。
巻末の作者あとがき(こちらは日本語で書いてくれている)によると、「見知らぬ外国に流れ着いて、会話も通じない人間の集団の中に放り出されたような心細い気持ちを味わってもらいたかった」とのことだ。
千五百ページにも及ぶ本書を読み終えるのにどれほどの苦労と時間が必要となるか想像もつかないが、根気と余裕のある方は挑戦されてはいかがだろうか。
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