『うなぎさんを食べなくたって生きて行ける』

やましん(テンパー)

『うなぎさんを食べなくたって生きて行ける』

 このお話しは、フィクションです。



   🐍?


 むかしは、うなぎのかばやき、うなじゅう、うなどん、という、食べ物があったそうな。


 いや、いまでも、あるらしいのです。


 伝え聞いた話しでは、『ニュー・トウキョウ・タウン』では……………あ、むかし、あった、トウキョウというマチは、いまは、深い泥の底に埋もれているのだそうで、そこから、はるか内陸部で、かつて、ヤマナシとか言われた地域に、ありますが……………その、とある高級料亭の隠しメニューの中に、ひそかに隠されているのだそうです。


 それは、なんと! 一杯、大体、1000万ドリムから2000万ドリムな、らしいです。


 ぼくのお給料が、月5万ドリムですから、いかにものすごい食べ物かが分かるというものです。


 ただ、どうやら、自分で払う人は少数派で、大概は、国賓とか、巨大企業のお客様とかで、相手払いらしいのです。


 最近は、非常に景気がよい、月や火星や金星からのお客様の人気が高く、食べる方も、多いんだとか。


 ま、ぼくには、縁のない世界です。


 かれらは、宇宙船で、直にやって来ます。


 でも、だいたい、『ニュー・トウキョウ・タウン』には、国民であっても、国内パスポートと、許可証がないと、入れません。


 それには、お金も、かなり、かかります。


 さらに、交通機関も、それらがないと、乗せてもらえませんし、運賃が、たいへんに高いのです。


 通常路線でも、500万ドリムかかります。


 ただし、超高速リニアだと、料金はうなぎのぼりになり、通常料金は、うなぎさんより高くなります。一部、例外があるそうですけれど。


 なので、どうしても、行かなければならないが、お金がない地方人は、借金するか、はるか1000年前の江戸時代のように、歩いて行くか、するんだそうです。



 でも、特に後世の方は、きっと異常な感じがするかもしれませんが、それは、昔から似たようなものだったと聞いています。


 古い『第二憲法』では、移動の自由が認められてはいたけれど、普通のサラリマンは、行くお金も時間も足りなかったとか。


 事実上、拘束されていたようなものだとも聞きます。



    🐟    🐟    🐟



 さてと、で、先日、『ぼくは非番です!』 


 だったので、小さな公園の、古っるい、ぱんだの像にのっかって、ひとりマンガ本を眺めておりました。


 内容は、『読まなくてもわかるマルクス経済学』です。


 だから、じっと同じページを眺めておりました。


 カバンの中には、『読まなくても分かるミクロ経済学』というマンガ本もあります。


 すると、ひとりの女性が、さささ、と、近寄って来たのです。


 みれば、絶世の美人と見ました。


 この当たりでは、あまり見ない、立派な身なりです。


 これは、危険な存在か?


 そう、感じました。


 だいたい、ここらあたりで、良い身なりをしていると、襲われる危険性もあります。


 けれど、彼女はあっさりと、こう申しました。


『こんにちはあ。あたくし、『極東うなぎ委員会』のダイアナと申します。』


『はあ、ども。』


 彼女は身分証明書を提示しました。


 なるほど、そう書いてありますし、『政府機関』を証明する四次元マークがあります。


 ぼくのセンサーが、『ピピピ』! と、安全コールをしました。


『で、あなた、もし、今日お時間があれば、うなぎ、食べに行きませんか?』


『ぎぇ!』


 そらまあ、先の様な事情でありますから、ぶっちぎりで、びくりして、当たり前なのです。


『ご冗談を。またまたあ。』


『いえいえ、まじめなお話です。うなぎ資源は、ご承知のように、枯渇状態です。しかし、現在太平洋地域を上げて、大増産に取り組んでおり、近く、首都以外の地域でも、食べられるようにしたいと考えております。その実験場が、この近くにあることは、まだ公表はされておりませんが、少しずつ、地域実証実験を開始しております。4時間くらいですから、御協力くださいませんか? お礼に、少しですが、うなぎの御試食もしていただきます。』


 だいたい、『石橋は三回叩いても渡らない』ぼくですから、普通なら断るのですが、この度は、興味が先に立ちました。


 そこで、彼女に付いてゆくと、近所の中学校の校庭に、こぎれいな『空中バス』がやってきまして、そこに乗り込んだのです。



      🐡      🐡      🐡


  

 どこでどうやって集めたのか、けっこう50人くらいの人が乗っておりました。


 どうも、ぼくが最後だったらしく、バスはそのまま、海に向かって飛びました。


 おいしい、ジュースが出ました。


 ものすごい、高級ジュースのようでした。


 バスの中では、『うなぎさん』の食文化に関する講座が放送されていましたが、あっというまに現場に着いてしまったので、ぼくは、あまり見ることができなかったのです。


 まあ、あとで、データをおみやげにいただきましたが。



 そこは、巨大な『幻視釣り堀』みたいな感じでした。


 実際のお魚を無許可で釣り上げると、資源が無くなるので、固く禁止されておりますが、これはあくまで『幻視』なのですが、それなりに、古代の魚釣り文化を体験できるので、大変に好評なのです。


 でも、やってきた、そこは、まったくの別物で、とてつもない場所でした。


 30分くらいの、解説がありました。


 男性の研究員さんが、解説してくれます。

 

『・・・で、このあと、実際のウナギ養殖場に入ります。おそらく、みなさま、驚かれることでしょう。ここで養殖されるうなぎさんは、在来種のうなぎさんに比べ、約20倍~30倍以上の大きさがあります。なので、一匹で、20人~30人分のかばやきが作れます。ただし、さすがに人力では大変なので、加工工場で作業が行われることになります。ここには『検証工場』も、併設されていますが、そこは、まだ非公開です。では、こちらに。』


 ぼくらは、ほかの地域から来たらしい人たちとも合流し、数百人規模になっておりました。


 そうして、海の上に作られた『プラットホーム』と呼ばれる場所に来ました。


 下は、海です。


 その上に、なが~いベンチの様な座席が、ずらっと並んでいますが、良く見れば、一つずつが、きちんと、分かれてます。


 座りやすいです。


 前側には、テーブルがあって、間もなくそこに、むかしあった、くるくると料理が乗って回る食堂の様な感じで、きれいなお料理がどんどんと自動で配布されて行きます。


『さて、お待ちかねの、うなぎ料理です。』


『うぎゃわ~~~~~!』


 お客さんが向こうの席から、連続ウェーブのように、やたらに激しく叫んでいます。


『ななな、なにごと・・・・・うわあ~~~~~!』


 鈍感なぼくも、びっくりしました。


 おそらく、エサが撒かれたのでしょうか、まっくろな、巨大な生き物が、足元でもつれ合いながら、餌を奪い合っているらしいのです。


 それが、向この方から、順番に迫って来るのです!


『これあ、また、すっごい。うなぎって、こおんな、怪物だたのかあ!』


 ぼくは、驚愕しました。


 みなそうです。


『これが、『ジャイアント・ジャパン・うなぎ』さんたちです。小魚などを食べますが、大食漢さんたちです。さあ、お料理を食べながら、御観覧ください。食費は無料ですが、お食べ頂いた方には、あとで少し、養殖作業をご体験いただきます。それだけです。簡単な作業ですから。』


『ははは。』


 とか、・・・・・


『うわ~~~』


 とか、お客さんたちが、びっくりしています。


 『少し・・・』とは、よく言ったもので、これは、写真で見た『うなじゅう』そのものであります。


 『1000万ドリムかあ・・・・・』


 ぼくは、ごっくりときました。


 しかし、ぼくの生来の警戒心が、やたら警報を鳴らすのです。


 しかし、勇気のある人たちが、食べ始めました。


 『おわ~~~~~。美味! 』


 『天国のお食事みたい~~~!!』



 とくに問題もないようで、安心した人たちが、つぎつぎに食べ始めたのです。


 でも、ぼくは・・・・・様子見していました。


 となりの女性も、そうでした。


 

            🐡   🐟   🐟



 一段落した後、うなぎさんたちも静かになり、とくに、何かを確認するような動きもなく、アナウンスが入りました。


『みなさん、お気に召しましたか? では、これから、お食べになった方には、軽い運動をお願いいたしましょう。』


 あ、っという間でした。


 客席が、一斉に、抜けたのです。


 『え?』


 何が起こったのか、よくわからなかったのです。


 『うん、まあ!』


 となりの女性が小さく叫びました。


 でも、ぼくの席も、その人の席も、そのままです。


 周囲を見回すと、全体で、5人くらいの人が、残っていました。


 で、・・・座席の下は、もう、ものすごいことになっておりました。


 いくらなんでも、その描写は、不可能です。


 あきらかに、立場が逆転していたのです。




        🐟   🐟   🐟


 

 ぼくは、お土産をいただき、また空中バスに乗りました。


『ええ、今日ご覧になった事を、外部にお話になりますと、国家反逆罪となります場合がありますので、ご注意ください。もっとも、冗談としか思われないですけれども。』


 勧誘していた女性が言いました。



 ぼくの隣には、あの女性が座っていました。


『あなた、もしよければ、一度お話しませんか?』


 一枚のカードを渡されました。


 『極東地域自由人類協議会 代表 ダイアナB型『***004』  連絡先・・・・・・』


 バスの前方にいるダイアナさんとは、別人なのですが、女性の40%は、ダイアナさんで、男性の45%は、アダムスさんです。


 彼らは、『火星』や『月』や『金星』の出身者なのですが、いろんな理由で、地球に追放された人々の子孫さんです。


 彼らは、地球人と一緒に暮らしており、実権を奪われています。


 もっとも、その昔は、地球にいた人たちですから、みな地球人の子孫さんなのです。


 こうした、地方における、権力外の『火星人』さんや『金星人』さん、『月人』さんたちによる、『地方地球人』を巻き込んだ勢力争いは、日常茶飯事です。


 もっとも、地球に依存する度合いが高い『月人』さんは、ぐっと『地球人』寄りですが。


 現在、地球の支配者は、『本家火星人』さんたちです。


 『ニュー・トウキョウ・タウン』にいる、いわゆる『指導者クラス』の60%は『本家火星人』さんで、30%が『元祖金星人』さん、5%が『月人』さんたちです。残りが、地球人の『スーパーエリート』と呼ばれる人です。


 『ニュー・ロンドン・シティ』などは、『金星人』さんと『火星人』さんの比率が逆なんだそうです。


 どっちにしても、ぼくたち『地方地球人』が、文句を言う余地は、あまり、ありませんです。


 まあ、大方、いまは、こうした世の中なのであります。



 べつに、うなぎさんを食べなくても、生きては行けるのです。 🍣


 




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『うなぎさんを食べなくたって生きて行ける』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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