第100話 影達
帝都の建物は他の街と比べて高い。そんな中の1つに4人の男女が屋根の上から冒険者組合を見つめていた。すると、その中の1人であるジンが口を開く。
「来たぞあれがゼフだ。 聞いていた通り金髪の奴隷と少女の奴隷を連れているな。 先程奴の召喚した魔物に連れられた2人はどうした? まあいい、ミリア奴に関する情報を調べろ」
「わかりました、ジンお兄様」
黒のドレスを着た白のツインテール少女はそう言うと能力を発動させ、ゼフに関する情報を抜き出そうとする。この能力は神眼といい、おそらくこの世界で最強の鑑定眼である。普通ならば抽象的な情報しかない得られないが、この眼を使えば相手の全能力の情報やどんな魔法を使えるかなど全てを見抜くことができる。
「さて、エムニア。 次はお前の得意な尾行だ」
ジンが名前を呼ぶと、赤髪のショートカットが目立つ半袖短パンの女性はこちらを向き口を開く。
「やっと、あたしの出番か。 尾行すればいいんだろ? 兄ちゃん」
「ああ、そうだ。 それとサインズ、お前は俺としばらく待機だ」
「はいよ、兄ちゃん」
茶髪の首まで伸びた髪の少しチャラい男は気だるそうに返事をする。
「各々役割は理解したか? では、行動に移せ」
ジンが命令すると、エムニアはバレないように慣れた動きでゼフの元に向かって行った。
「ミリアどうだ?」
「ジンお兄様もう少しお待ちください。 そろそろ彼の使う召喚魔法の詳細がわかります」
「そうか、頼む」
「それにしても兄ちゃん、まさか相手が召喚士とは思わなかったしょ?」
「まあな、クライエルは全くそういうことを言ってなかったからな。 だが、そんなのは関係ない。 俺達はやることをやるだけだ」
「はっきり言って、3日じゃきついっしょ」
「そうだな、俺達4兄弟は最低でも殺すのに1週間かけてきた。 情報を収集するミリア、偵察・尾行のエムニア、戦闘特化のサインズ、そして戦闘兼作戦指揮をする俺。 この4人ならばできないことはない」
「俺も同じだぜ、兄ちゃん。 まあ、いつものように妹のミリアとエムニアが俺達に繋いでくれたら問題ないっしょ」
「そうだな、俺達は血の繋がった兄弟だからこそ人1倍信じることができる。 これほど頼もしいことはない」
ジンはふと隣のミリアを見ると何故か顔を青くしている。どうしたんだろうと思ったが、ちょうどその時ミリアがこちらを向く。
「ジンお兄様、ゼフという冒険者の全ての能力がわかりました」
「そうか、それでお前から見てどうだ?」
「はっきり言って、彼は人間としては並以下ですが、召喚士としては化け物です」
「やはりそうきたか…… まあ、化け物の相手はいつものことだ。 ミリア内容を詳しく教えてくれ」
「ジンお兄様、このゼフという冒険者は今までの化け物のような者達とは比較になりません。 簡単に言いますと、彼は化け物の中の化け物です」
「それマジ?」
「大真面目です、サインズお兄様。 私個人としてはエムニアお姉様をすぐにこちらに戻すべきです」
ミリアがそう訴えている隣でジンは深く考える。そして、数秒後口を開いた。
「ダメだ、もしもこの依頼を失敗したら俺達の評判が落ちる。 だが、ミリアが言いたいこともわかった。 ここは手を出さずに様子を見て、その後判断しよう」
「ありがとうございます。 ジンお兄様」
「兄ちゃん相変わらず妹思いのシスコンだね」
「そんなことない、ただ俺は誰にも死んで欲しくないだけだ。 それでミリア、もう1度聞くが奴はどんな能力を使う?」
「はい、彼の能力で特別厄介というものはありませんでした。 しかし、召喚できる魔物の種族が25種類あり、1番強い魔物が終焉種というものらしいです」
「終焉種か、聞いたことないな…… お前はどうだサインズ」
「全然わかんないっしょ」
「みたいだ、ミリア続きを頼む」
「はい、彼の召喚する魔物は蟲だけのようです。 召喚できる数も桁違いですが、あらゆるものを削ることにで可能にしているようです。 それに1度召喚された蟲達は戻すことができないようです」
「ということはあの2人を連れて行った蟲も戻してないのか」
「はい、どうやら彼は魔法も使えるらしく、その中に信じ難いのですが、蘇生や透明化の魔法もありました」
「透明化か…… それをやられると厄介だな。 それに生き返るのか…… 作戦を少し考えなければな」
深くジンが考えている中、ミリアは緊張を押し殺して口を開く。
「最後に彼が終焉種を含む25種類の蟲達はただの召喚魔法で召喚できるようなのですが、彼は26種類目の蟲を召喚できるようなのです」
「どういうことだ?」
「ゼフという冒険者は禁忌召喚というもので禁忌種というさきほど言った終焉種よりもはるかに上の存在を召喚できるようなのです」
その言葉を聞いたジン達は意味がわからないほどの存在であるゼフを本当に殺せるか疑問を抱き始めた。
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