第45話
全てが終わり、やっと夕飯前に公爵家に戻ってきた。
あの後ブランと夫人2人とも騎士に連れて行かれたが、もう反抗はせずにことなしく騎士について行った。
全てを告白した夫人は抜け殻のようだった。
明日からはまたミラにむけて出発してアーシスに戻らないといけないので、今日で公爵家にお世話になるのは最後になる。
全てが解決したお祝いとして、お父さんのヒンメルさんとエステルさん、あおいさん、私のみんなで夕食を取ることにした。
今まで公爵家でご馳走になった食事も豪華でものすごく美味しかったけど、今日のはさらに凄い。
「長年の公爵家の問題が解決できたし、ユスティアのことも真実を明らかになりよかった。
これで安心してセレストに爵位を任せられる。
みどりさんは巻き込んでしまってすまないね。」
ヒンメルさんは申し訳なさそうで、悲しそうで、けれども安心したような顔で言った。
大切なユスティアさんの死の真相を知れて、優秀なあおいさんを後継にできたとはいえ、一応ブランもヒンメルさんの実の息子だからね。
「みどりさんは店でセレストの助手をしてくれていたんだろう?
セレストはこれからすぐ領地の屋敷で次期公爵としての勉強が始まる。
セレストのから店と扉の管理を引き継ぐ魔法使いは優秀な魔法使いを選ぶから、もしよかったらまた手助けしてやってくれ。」
やっぱり。すぐあおいさんはいなくなっちゃうみたい。
次期公爵。身分も全然ちがうし、これからは気軽に会えないだろう。
そもそも私みたいな一般人が今まで一緒にいられて、こうやってあおいさんの家族と一緒に過ごせることが奇跡みたいなもんなんだよね。
休みのたびに冒険者としてエスティエーリルに来るのがルーティンになってるし、楽しいから辞めるつもりはないんだけどね。
あおいさんじゃない他の人とお店や冒険をするのは全然想像できない。
あおいさんの時も最初はイヤイヤ仕方なくだったし、そのうち新しい人とも楽しく仕事できるようになるだろうか。
「いや、みどりには私に着いてきて手助けしてほしい。」
???
あおいさんを手助け?
「領地経営のお手伝いってことですか?
今まではお店でお手伝いして休みにこっちで素材集めと依頼受けてってしてたから大丈夫でしたけど、私向こうでの仕事があるので領地でお手伝いは無理だとおもいますよ?」
なんだかもごもごしてる。
キッパリハッキリのあおいさんにしては珍しいな。
「・・・だから、そのっ、こっちに住めばいいじゃないか。」
「いやいや。
それって向こうでの仕事やめなきゃいけないじゃないですか!
流石にこっちに友達もほとんどいない私にとっては生活の面で不安が大きいです。
仕事を手伝うっていってもこれからはこんなに気軽に話せなくなると思いますから。」
ヒンメルさんもエステルさんもそんなことないって言ってくれるけど、こっちに引っ越してきたら身分社会の中で生活するってことだもんね。
あおいさんの手伝いって言っても今までみたいには無理だろう。
平民の私と公爵家の人では身分が違いすぎる。
改めて考えたら、こっちに住んでる友達ってリリーちゃんくらい?
あとはお店の店員さんとかギルドのスタッフさんとかが知り合いって言えるのかな?
流石にこの状態で引っ越すのは不安すぎる。
「身分なんて気にすることない。
今まで通り私のそばで手伝って欲しいと言っているんだ。」
なんだかあおいさんがちょっぴり駄々っ子になってる。
こんなあおいさんは珍しい、というか初めてみた。
それに、それだけじゃなくお金の面もね。
1人だから自分のお金は自分で稼がないと。
こっちに引っ越してくるって冒険者しながらあおいさんのお手伝いするってことでしょ?
うーん、楽しそうではあるんだけど。
エスティエーリルって正社員とか福利厚生とか保険とかないし!怪我して冒険者できなくなる人も多いみたいだし不安が多い。
やっぱり安定第一だよね!
しかも異世界で一人暮らしって、考えただけでなんだか心細い。
それにあおいさんへの想いを自覚してしまった今、これから公爵になって良家の令嬢かなんかと婚約してってなっていくあおいさんを近くで見るのは正直辛い。
婚約者になるあおいさんのお相手も、いくら仕事とはいえいつも女が近くにいたら嫌な気持ちになるだろう。
そうあおいさんに言うと、
そうじゃないとか婚約者はあれだとか言ってる。
意味わからん。
それになんだかヒンメルさんとエステルさんがなんだかニコニコこっちを見ている。
流石にこんだけずっとグダグダやってるから痺れを切らしたのか、ヒンメルさんが横から入ってくる。
「セレストは口下手でわかりずらいんだから、ハッキリ言わないと伝わらないよ。」
そうだそうだー!
いつもはハッキリキッパリなのに、なんだか今日のあおいさんおかしいよ。
「だから、その、みどりにはこちらに来て私を支えて欲しい。
婚約者として。」
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