第28話


「そろそろギルドに向かおう。」


今日はクラーケンの解体が終わる日だ。

クラーケンを倒した次の日だから昨日は依頼を受けるのはお休みしてあおいさんと1日かけて町を見て回ったがまだまだ全部見きれなかった。

でもいっぱい美味しい魚介類を買いだめできたし港町ならではの可愛い雑貨屋さんや観光スポットにも行けたから大満足だ。

せっかく清水さんと仲良くなれたからとお土産に綺麗なストラップを買った。

こっちにはいろんな綺麗な素材のものがあるけれど地球の人に渡してもおかしくないものから選ばなければならなかったのがちょっと残念だった。



「一昨日の素材と代金を受け取りに来た。」


「あ、お2人とも!こちらにお願いします!

まず私と倉庫にいって素材の確認をお願いします。ついてきてください。

今回凄く質の良い素材がたっぷり取れて、ギルドマスターなんて昨日1日中ご機嫌でしたよ!」


「おう!2人とも!

みてくれ!凄ぇだろ!!

これ全部あのクラーケンから取れた素材だぜ!」


そこには倉庫を埋め尽くさんばかりの素材の山。


「うわぁ、すごい。

これが全部あのタコなんて信じられない。」


解体前もものすごく大きかったけど、素材になると改めてものすごいものを倒したんだと実感が湧いてくる。


「じゃ、まず身と魔石をしまってくれ。」


「身はみどりが欲しいんだろう。

みどりのマジックバックにしまっておけ。」


「やった!ありがとうございます!」


私はアイテムボックス持ちだとバレないようにマジックバックのフリをしこそっと詠唱してクラーケンの身をしまう。


「魔石はもしよければ私が貰ってもいいか?みどりが倒した魔物だし、後で代金を支払おう。」


「いやいや!あおいさんがいなかったらクラーケンなんて倒せてなかっただろうし、調査方法もあおいさんが考えたんです。

普通に受け取ってください!」


「それじゃあお言葉に甘えて、いただこう。」


あおいさんは魔導口も作るらしく、私が着けているネックレスやブレスレットもあおいさんが作ったものらしい。

多分またこの魔石でも何か魔導具を作るんだろう。


「素材の確認をお願いします。

まずこの嘴が大金貨80枚、目玉が2つで大金貨65枚、墨が大金貨75枚、身が半分で白金貨2枚と大金貨30枚になります。こちらでいかがでしょうか?

それと今回の依頼が原因の調査だけで討伐料が入っていなかったのでギルドマスターと相談して討伐料を大金貨60枚お支払いさせていただくことにしました。」


「それで大丈夫だ。」


「ではこちらに纏めて白金貨5枚と大金貨10枚が入っています。

お納めください。」


え?え?

白金貨5枚と大金貨10枚!?

金額が大きすぎて意味がわからない。

えっとえっと、白金貨が1枚100万円で、大金貨が1枚1万円だから・・・510万円!?

え、ほんとにこんな大金受け取っちゃっていいの!?


「あぁ。

みどり、ほら。」


ん???


「なにをぽけっとしている。

お前が倒したんだからお前のものだろう。受け取りなさい。」


「いやいやいや!!

だから、あおいさんがいなかったら依頼受けてないし、調査方法もあおいさんが考えたし、あおいさんがいなかったら倒せてなかったんです!

だから、せめて半分こにしてください!

平凡な私には気軽にそんな大金受け取れません・・・。」


「そうか?私は今までの仕事の素材採取ついでにいろいろ魔物を狩って売っている割に、あまり出かけなくてお金を使っていないからな。そんなに気にしなくていいんだが。

まぁそう言うなら半分は貰おう。」


「ひぇぇぇ。半分でも私には多すぎるくらいですよ!」


「それと、今回のクラーケンの討伐でみどりさんのランクがBランクになります。

こちらが新しいギルドカードです。」


「わ!やったぁ!とうとう私も銀色ですよ!

あれ?あおいさんのランクは上がらないんですか?」


「言っていなかったか?

私はSランクだからこれ以上上がることはない。」


「えっ、Sランク!?

聞いてないですよ!それって1番上のランクじゃないですか!!」


「そうだ。

仕事の都合や魔導具作りの材料集めなんかのついでに依頼を受けていたらいつの間にかSランクになっていた。」


「お2人ともさらっと話しているけれどとてもすごいことなんですよ!

Sランクなんて各国に数えられる程しかいないんですから!

それにみどりさんも登録日から考えると驚異的なスピードでランクアップしていますね!」


どうりでいつも街に入る時にあおいさんが身分証を見せると門番さんがシャキッとすると思った!


「おいおい。今その嬢ちゃんがBランクでにいちゃんがSランクだって聞こえたが、俺の聞き間違いか?」


なんだこいつは。

剣士だろうか?そこそこ体格も良いし鎧を身につけ綺麗な剣を腰に下げているが、なんだかチャラチャラしてて正直あまり強そうには見えない。


「こんな女がBランクでこの俺がCランクってのはおかしいんじゃねえのか?

それにクラーケンを倒しただって?

何かの間違いだろ??

間違いじゃないとしたらそこらで死んでたクラーケンを偶然見つけたか、どっかに盗みでも入ってきたんだろう。」


「なっ!ちゃんと自分たちで倒しましたよ!

漁師さんの船に乗って倒してきたんです!証人もいますよ!漁師のガンツさんに聞いてみてください。」


「なんだ?盗みの共犯者か??」


「なっ!なんてことを言うんですか!!」


「みどり、落ち着け。

こんな奴の言うことなんて聞かなくていい。

相手の力量すらわからないアホだ。」


「なんだと?だったら俺とヤッてみろよ!

ほら!!」


ドンッ!!


「痛っ!」


まさかここまで突っかかってくるなんて。

急なことでバランスがとれなくて尻餅をつく。


そっちがそうくるっていうなら!


「【スタン】!」


最近覚えた水と風の複合魔法だ。

ビリビリ痺れてしまえ!


「うわぁ!」


ふっふっふっ。

ビリビリくるでしょ!


「あおいさんどうですか?この新しい魔法・・・。」

って、えぇ!?

めっちゃ怒ってる!


あおいさんの体の周りにものすごい密度の魔力が溢れ出す。


「おい、いい加減にしろよ。

人の弟子になにをする!」


「ヒッ!魔法使い!?

それも2人共だと!!?

そんなパーティーありかよ!クソッ!」


「あおいさん、私は大丈夫ですから!

変なチャラ男剣士も逃げていったし、落ち着いて!」


「・・・ふん。」


ギルド内はものすごくざわついていた。

魔法使いが2人も?

まじか?

どんだけヤバイパーティーなんだよ!


「まさか、魔法使いって少ないんですか??」


「魔力はみんな持っているが、少し火がつけられたり、光をともせたり、普段の生活に少し役立つくらいだ。

魔法使いと呼べるほど魔法が使えて冒険者になったりできるほど魔法が使える人は少ないな。」


冒険者ランクの基準はほとんどの人が攻撃魔法を使えない前提で作られているらしい。

どうりですぐランクが上がるはずだ。


「魔法使いがそんなに珍しいなんて、知らなかったです。」


「言っていなかったか?

ふっ。まぁ、これだけ冒険者ギルドに来ているのに魔法使いが少ないのに気が付かないのもどうかと思うがな。」


「もー、笑わないでくださいよ。魔法使いは武器を持ってるわけでもないし、この人は魔法使いだ!この人は魔法使いじゃないな!なんて私にはわからないですもん気づかないですよ!」


「まぁいい。

とりあえず素材とお金も受け取ったことだし、気分直しに街でもふらふらしようか。」


「そうですね!私、最初に食べた海老がまた食べたいです!」


「ふはは!また食べ物か。

まぁいい、屋台がある方に向かおう。」



お金が入ったからと街に出て買い物をしたが、冒険者ギルドにいた冒険者から私たちがクラーケンを倒したと噂が広がったのだろう。

これで安心して海に出られる。

魚介類が仕入れやすくなった。

ありがとう!とたくさん声をかけてもらった。

ロイヒテンデス最後の2日間は買い物&観光ざんまい、思い残すことがないくらいに楽しんだ。

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