第10話
30分後、ミラの門に到着する。
朝の門番さんだ。
「あぁ、おかえりなさい。
身分証をお願いします。」
門を出入りするときには必ず身分証を確認し、町に誰が入ったのか、依頼に出て帰って来ていない人はいないかなど確認しているらしい。
「もう昼過ぎだ。
昨日の《3匹の子豚》にいって食事をとろう。」
「はい!」
ずっと動いていたからか朝しっかり食べたのにお腹がペコペコだ。
「いらっしゃいませ。
あぁ、昨日の!」
「2人で、昨日と違うものを頼む。」
銀貨8枚を渡す。
「はいよ!」
「ふぅ。食事をしたらまず冒険者ギルドで依頼完了報告をしなくてはな。
それに帰りに倒した魔物も売れる。
そのお金を受け取ったら買い物に行こう。」
「はい!」
買い物!
昨日からすごく楽しみだったのだ。
「おまたせ!ビッグホーンカウのステーキとライス、ピクルスだよ!」
「お米!!お米ですよ弓波さん!!」
「この国はパンが主食だか一応米も食べられている。昔日本から扉を通った者により伝わったらしい。」
ビッグホーンカウは角が大きい水牛のような見た目の牛らしい。つまり牛肉だ。
それに紫色の大根おろしのようなものがかかっている。
「この紫色のはなんですか??」
「紫色の大根だな。」
やっぱり!おろしステーキだ!
「いただきます!」
おいしーい!!
お肉は柔らかいし、サラダも新鮮で美味しい。
「これ、もしかして醤油もこっちにあります??」
「あぁ、醤油も味噌もある。
大豆が伝わっているからな。」
やっぱり。
ステーキのソースが醤油が入っているような和風のソースなのだ。
「HP回復薬の材料はハーブだし、いろいろ伝わってるものも多いんですね!」
「あぁ、こちらから向こうに伝わったものもあるし逆もある。
・・・さて、そろそろ冒険者ギルドに向かうぞ。」
「はーい!」
食事を終えギルドに着く。
3時。まだまだギルドは空いている時間だ。
「依頼の完了報告に来ました。」
冒険者カードを出すと、
「タイム草とセージ草の採取と魔力石の作成ですね。」
自分用に5本ずつ残し15本ずつ出す。
「こちらの依頼が10本で達成料が大銀貨1枚ですので合わせて大銀貨3枚です。
魔力石の方はどうですか?」
みどりはあの時作った魔力石を出す。
「魔力石は出来により金額が変わりますが、うん、なかなかいいですね。
こちらですと大銀貨5枚で買取できますね。
全て合わせて大銀貨8枚です。」
みどりは冒険者カードと報酬を受け取る。
「次は魔物買取カウンターだ。」
このカウンターは依頼外で狩った魔物も解体、買取してくれるらしい。
「いらっしゃいませ!買取ですか??」
「あぁ、ファングラビット2匹にブラックウルフ1匹。あとこのミミックカメレオンの皮と魔石以外の買取を頼む。」
そう言って狩って来た魔物をカウンターに置く。
「お!ミミックカメレオンですか。
皮と魔石は買い取らなくてよろしいのですか?」
「あぁ、こちらで使うんでな。」
「残念ですね。
ファングラビットの素材だと皮と肉と魔石が2匹で大銀貨4枚、ブラックウルフはの素材は皮と魔石で1匹大銀貨8枚、ミミックカメレオンは1番高額な皮と魔石がないから金貨2枚です。
合計金貨3枚と大銀貨2枚ですね。」
弓波さんがカウンターからお金とミミックカメレオンの皮と魔石を受け取る。
すごいなぁ、銀貨3枚と大銀貨2枚ってことは今のでだいたい3万2千円??
「ほら。」
と受け取ったお金を渡される。
「え、どうして?」
「全部みどりが倒したものだろう。」
「でも!全部弓波さんが魔物の相手をしてくれて私は攻撃魔法を撃っただけだし、こっちに来てから宿も食事も全部出してもらってますし・・・。」
「いいから受け取りなさい。
この後の買い物もこっちのお金がないとできない。」
そっか、こっちのお金がないと買い物もできないもんね。
「じゃあお言葉に甘えて、ありがとうございます。」
「では買い物に行こう。
先に必要なものを買ってからいろいろ見てみよう。」
「はい!」
冒険者ギルドを出て弓波さんの後について歩く。
「ここだ。
ここは薬品を生成するときの材料や瓶を売っている。」
弓波さんがスタスタ店に入っていく
「おい、いるか?」
しばらくして奥からひょろひょろの男性が出てくる
「は〜い。なんだ、アオイか。
ん?1人じゃないのは珍しいな。どうした。」
「弟子をとった。」
「そりゃ珍しい!
よっぽど才能あるんだな!」
違うんです、秘密を知ってしまったからなんです!
「はじめまして、みどりと言います。」
「俺はリック。ここ《女神の雫》の店主だ。」
「今後みどり1人でここに来ることもあるだろう。
よろしく頼む。」
「あぁ。」
とニヤニヤしながら店主は言う。
「みどりちゃん、アオイが他人のことをよろしく頼む、なんて言うこと滅多にないぜ。
よっぽど気に入られているんだな。」
気に入られてる??
笑ったところも数えられるほどしか見たことないぞ??
「おい、何話している。
リック、この薬草とあっちの薬草30ずつ。
あとこの瓶も30で。」
「みどり、今度作る化粧水を入れる瓶を選びなさい。」
「はい!」
瓶だけでも色々な色と形がある。
その中で、薄ピンクで表面にカットが入った瓶が目に入った。
「うわぁ、綺麗。
これにします!」
「じゃそれも1つ。」
「まいど。
大銀貨9枚と銀貨5枚だ。」
「瓶の分は自分で払います!
さっきの報酬があるので。」
「いい、別でなど面倒だ。」
弓波さんが先にまとめて払ってしまう。
さっき報酬も貰ってしまったのに。
「ではまた来る。」
リックさんに商品を包んでもらい店を出る。
「もう私が必要なものは買った。
後は好きに見ればいい。」
「ありがとうございます!」
街を歩きながらどのお店を見るか考えるが、お店がたくさんありすぎて決められない。
「いろいろなお店がありすぎて、どこを見ればいいのか迷ってしまいますね。」
「ふむ、ではあそこの店はどうだ??
魔物の素材でアクセサリーや小物を作って売っている店だ。
最近女性に人気だと話に聞いた。」
「魔物の素材でアクセサリーを作るんですか!?」
「今日みどりが倒したような魔物では作らないぞ。
魔物の中には牙や角や鱗が綺麗でアクセサリーに向いているものがいる。
そういったものを加工してアクセサリーにしているんだ。」
「そのお店、見てみたいです!」
「あの左にある白い店だ。」
お店に入ると壁一面アクセサリーでキラキラだ。
うわぁぁぁ!!
すごい!
魔物の素材と聞いたからどうかな?っと思ったけど、とっても綺麗だ。
人気と聞いただけあって、店内は結構混んでいる。
若い女性が多いが男性もちらほら見かける。
「なかなか腕のいい職人が作っているようだな。」
店内を見て回るが素敵なものがたくさんありすぎてなかなか選べない。
牙や角と言っていたから象牙の様なものを想像していたが、流石異世界。
もちろん象牙の様な見た目の物もあるが、色があるものも多いし、透き通っているものやキラキラしているものなどたくさん種類がある。
そういった素材に彫り物がしてあったり形を加工してあったり、とにかく繊細できれいだ。
「どうだ??
欲しいものは見つかったか??」
「うーん、ネックレスとブレスレットは弓波さんに貰ったのがありますし、ピアスか、それともヘアアクセにしようか・・。
ネックレスが外せないので、ネックレスの石の青に合うものを探してるんですけど。」
「それならこの辺りはどうだ??
スパークリンフィッシュの鱗を加工したものだ。
海にいる魚型の魔物で2メートルくらいある。
鱗が綺麗で厚みがあってアクセサリーに人気なんだ。」
見てみると透明感があって、表面がオーロラに輝きキラキラしている。
「綺麗ですね!
ネックレスにも合いそう。」
あ、これ髪留めもある。
みどりはいつも仕事の時はゴムで適当に1つに纏めているだけだった。
こういうので纏めてもいいかもなぁ。
眺めていると、1つの髪留めが目にとまる。
日本のヘアクリップのようなものだろうか?
髪を挟むだけで纏められるようになっている。
花びらの形に加工してある鱗でできた花がいくつもついている。花の中心には青い石。
繊細なデザインですごく綺麗で、色もネックレスにはぴったりだ。
「それにするのか?」
「綺麗だと思ったんですけど、ちょっと私には華やかすぎないかなと思って。」
「いや、合うと思うが。」
「うーん、じゃあ綺麗だしこれにします!」
弓波さんの一言で髪留めを買うことに決めた。
「これお願いします。」
「はい。こちら金貨1枚と大銀貨3枚です。」
高い!
日本円だと1万3千円。
たしかにこれだけ細かい細工がされてるんだもんなぁ。
よし、どっちみちこちらの世界でないと使えないお金だ。
買っちゃおう!
「これでお願いします。」
金貨2枚を出す。
「大銀貨7枚のお返しです。
ありがとうございました!」
髪留めを包んでもらい、店をでる。
「他にみたい物はあるか??」
「もう大丈夫です。」
今日はもう1万3千円も使ってしまったのだ。
普通の事務職員からしたら大きな買い物だ。
「じゃあそろそろ帰るか。」
もう夕方だ。
今から森に行って帰るとなると向こうに着くのは夜だろう。
ミラの門を出て森の中の家へと向かう。
この2日目で魔力の使い方に慣れたのか来た時よりだいぶ楽だし速い。
辺りがだんだん暗くなってきた。
「もうそろそろ着くぞ。
行きよりだいぶ速くなったな。」
「はい!」
行きは3時間半もかかってしまったが、帰りは2時間くらいだった。
1時間以上も早くなっていて自分でもびっくりだ。
「着いたぞ。」
弓波さんの後に続き家の中に入り、扉の部屋へと向かう。
「はじめての異世界はどうだった??」
「すっごく楽しかったですよ!!!
ご飯も美味しいし、綺麗なものもいっぱいあるし!」
「来る前はあんなに騒いでいたのにな。」
弓波さんが思い出したようにフッと笑う。
「それはそれです!」
「はいはい。
では帰るぞ。」
そう言って扉を通った弓波に続いて、みどりも扉を通った。
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