第5話
《エスティエーリル》
それは魔法があり、獣人も存在し、魔物もいる。
そんな世界。
弓波の家の扉から繋がる異世界だ。
現在異世界にはこちらに繋がる扉が8つほどあり、どの扉も国や機関で管理をされていて、この扉はルーシェル王国のミラという街の隣にある、惑わせの森の中の家につながっている。
惑わせの森は薄暗く、地図や方位磁針も役に立たないため森に入るには魔導具が必要らしいが、こちらの樹海みたいなものなのかな?
弓波はこちら側の世界の店と異世界の家兼仕事場を行き来して商品を仕入れ製作販売をして生活しているらしい。
エスティエーリルではこちらの世界について噂程度でなら聞いたことがある人も多いらしく、変身薬を使って耳や尻尾、鱗などを隠しこちら側にきて生活している人も稀にいる。
そんな、こちら側で生活する異世界人たちのために向こう側からこちら側に来たい人の窓口になったり、こちら側の人から依頼があった物(エスティーリルの薬、食品、素材など)を異世界から仕入れ、売るのが弓波が営むこの店だという。
弓波も魔法が使えるらしく、こちら側で生活する異世界人から依頼があると自ら魔獣と戦い仕入れてくることもあるらしい。
「まぁ、大体こんな感じだ。
この店がどういったものかわかったか??」
「はい。
でも、私はここに来て何をすればいいのでしょうか??」
「手伝いだ。」
「・・・手伝い。」
「そうだ。
私の仕事の手伝いだ。正直私1人では全然手が足らない。」
「む、無理ですよ!
今の話を聞く限り私には手伝えません!!
私は魔法も使えなければ異世界にいったこともありません。」
「何をいっている。
魔法は覚えればいいし、異世界など扉を通ればすぐいけるではないか。」
私が言っているのはそういうことじゃない!!!
「魔法を覚える??私はこちら側の人間なのですが???」
「こちらにも魔法使いの昔話や呪いについての伝承などあるだろう。
昔はこちら側でも使われていたのだ。
科学が発展し、だんだんと魔法を使わなくなり、存在を信じるものが少なくなっていった。それだけだ。
こちら側の人間だって魔力はある。
練習すれば魔法だって使えるようになる。
とりあえず、これを読みなさい。」
・・・読めない。
「弓波さん、読めません。」
「あぁ、これを着けなさい。」
ポケットから何かを出す。
ブレスレット??
「魔導具だ。
着けていしきすると読み書きや異世界言語での会話ができるようになる。慣れれば自然と使い分けることもできるだろう。」
そんなものがあるの!!?
すごい!異世界すごいよ!!
みどりは先程受け取った本をチラリと見る。
《簡単!5歳から使える生活魔法の基礎》
5歳から・・・使える・・??
「この本を貸そう。この本は向こうの世界で初めて魔法を練習する時に読まれているものだ。
基礎の基礎から書いてある。
時間がある時に読んでおきなさい。」
「は、はい。」
「もう夜遅い、また明日続きを話そう。」
私は魔法の基礎の本を借り、店を出た。
家に着きいつもの様にベットに倒れ込む。
「はぁ・・・。ほんと、夢みたいな話だ。
って、明日も行かなきゃいけないの!?」
自然に明日も行くような流れになっていて気づかなかったが、まさかこれからこんな日が続くんだろうか。
手伝うってことはそれなりに顔お出さなくちゃいけないってことだよね。
今日の異世界についての話を思い出しバックから本をとりだした。
《簡単!5歳から使える生活魔法の基礎》
1.まずは魔力を感じよう!!
目を閉じ、心を落ち着かせよう。
体の中をゆっくり探すと、暖かい魔力を感じられるはず!
ゆっくり、リラックスしながら探すのがポイント!
「えーっと、目を閉じて、魔力?を探すっと。」
うーん、全然わからない。
というか眠い。
朝から仕事して、弓波さんのところにも寄ったんだもん。
明日も仕事だし、お風呂入って寝よう。
魔力を感じるなんて、すぐにできるもんじゃないや。
というか本当に私にそんなことできるのだろうか??
ピピピピピ---
目覚ましの音で目が覚めた。
今日を乗り越えれば2日間お休みだ。
いつもよりも気合を入れたからか、早く仕事が終わりそうだ。
昨日の時間で遅いって言ってたし、今日は早く弓波さんのところへ行かなくちゃ。
「よし、終わった!」
「六月さ〜ん!もうお仕事終わったの??」
帰る準備をしていると、花守さんが声をかけてきた。
「ちょっと手伝ってくれない?
今日までのが終わらなくって、、」
また!!?
「ごめんなさい。
今日は用事があって。」
「えぇ!どうしよう〜。」
うるうるした瞳を向けてくる。
ゔっ、周りの視線が痛い。
私はちゃんと自分の仕事終わらせてるのに〜!!
「ご、ごめんなさい。
本当に、今日ははずせない用事があって。
それじゃお疲れ様です!!」
あぁ、とうとう断ってしまった。
さらに目をつけられてしまったかもしれない。
けど、花守さんより弓波のさんの方が怖いのだ。
淡々としていて昨日と一昨日会ったが一度も笑顔を見ていない。
そう思いつつも初めて花守さんに断れてちょっぴりスッキリした。
「こんばんはー。」
お店の扉を開ける。
「あぁ、今日はおとなしく来たな
さて、昨日の本はどうだった??」
「最初の魔力を感じる??っていうのをやってみたんですけど、全然だめでした。」
「一旦そこでやってみせなさい。」
私は椅子に座り、昨日と同じように目をつぶり集中する。
「それではただ目をつぶっているだけではないか。」
集中して魔力を探してます!!
「そのままもっと頭を空にしなさい。
そしてそのまま体の中の魔力、暖かく感じる場所があるだろう。」
頭を空っぽに、暖かい場所を探す。
しばらく集中していると、ふんわり胸の中心が暖かい。
「胸の真ん中あたりが暖かい気がします。」
「それが魔力だ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます