第37歩 帰還Ⅱ

「本当に…ライガーがいやがる」


 ライを見たヴェグルが元攻略部隊のシードル新界開拓者とは思えないほどの驚愕の表情を見せて立ち尽くす。


「だから言ったじゃないですか」


 ライガーを連れて砦に入る訳にはいかなかったので、ソラが単独で状況を説明しにヴェグルさんのセクトへ向かったのだが、一向に信じて貰えず…。


 実物を見てもまだ信じられない表情をしているのだから、それもしょうがないことだったのかと思えてくる。


 砦の近くの小さな森の中、魔物でない小動物しかいないような森で。

 大人しくニコルに撫でられているライガーをヴェグルが受け入れられるようになるまでに、四半刻ほどの時間を要したのだった。


「こりゃあ、テイムだろうな」

「テイム?」


 ヴェグルの口から発せられた聞き覚えのない言葉に、三人が三人とも同じ方向に頭をかしげる。


「ああ。お前さんがこのライガーと契約したみたいだな。この紋章がその証だ。俺も生で紋章を見るのは初めてだが…」


 もはや呆れ口調のヴェグルはそう言うと、ソラの首元の紋章を指さした。


「これが、僕とライの契約の証……」


 ソラはそう言って自身の首元を触ると、ライの首元にも光るテイムの紋章をじっと見つめた。


「人界の魔物をテイムしているテイマーなら、いると聞いたことがある」


 伝手つてを使って何かしら知っている人物を紹介すると言ったヴェグルは続けて、


「新界の魔物のテイムは聞いたことがねぇ。一先ず、ライガーは人界の遠方の魔物ってことにするぞ」


 と言った。


 そして、ヴェグルに各所への対応をお願いし、一同は緊張な面持ちで人界へと戻ることにした。


 のだが…。


「「「えぇーーーー??!!!」」」


「クゥーン?」


 「ライ、小さくなれないかな?」と言うソラの言葉を受けて角の生えた室内犬へとデフォルメされたライが、皆の驚きに首を傾げるのであった。

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