第4話 あらやだ! じゃ、ひばりちゃんじゃないの!
「あらっ!? あららっ!? ふんふん……あら! あららららら!!」
まったくあらあらうるさい。
あまりにもヨシエさんがチラシを要求するので、スマホでタニヤマートのネットチラシを検索してあげたのだ。
するとヨシエさんは、やっぱりごろりと寝そべり、手のひら全体を使ってすいすいと操作しながらあらあら言い出したのである。
「どうですか、ヨシエさん」
「今回はまぁまぁね。主婦をなめてもらっちゃ困るわ」
「そうですか? 大安売りって書いてるじゃないですか。好きでしょ、大安売り」
と、玉子1パック148円を指差す。
するとヨシエさんは、明らかにこちらを小馬鹿にするような顔をして「ハッ」と鼻を鳴らした。いよいよムカつくな、このババア。
「タニヤマートが本気の時はね、玉子は108円になるのよ」
「たった40円じゃないですか」
「たった? たったって言った? いま? アンタ!」
「あの、アンタじゃなくて、みくです、私」
「みくちゃんっていうの? どんな字?」
「美しい空って書いて、『
「美しい空の……みくちゃん、ねぇ。いまの子は、はいからねぇ。あたしらの世代だと、美しい空っていったら、あれよ、ほら、ひばりちゃん! ひばりちゃんよ、ひばりちゃーん!」
「ひばりちゃん……。ああ、美空ひばり」
「そ、ひばりちゃんよ。愛~、さんさん、とぉ~。こぉ~の、んふふ、ふふふ~」
自信満々に歌い始めたのにもうハミングに切り替えやがった。歌詞わかんないなら歌うな。
「まぁとにかくね、みくちゃん。あたしら主婦はね、そのたった40円だって無駄には出来ないのよ。旦那が稼いでくれた大事なだいーじなお金なんだから!」
「まぁ……それは……そうですけど……」
何よ。意外とちゃんとしてるんじゃない。ま、まぁそうだよね。ヨシエさん、完全な主婦だもんね。でもほら、私は? 一応ちゃんと稼いでるし? まぁ食費は3割くらいの負担だったけど。
「その40円が積もり積もってねぇ……」
はいはい、大きな無駄になるとか、そういう話でしょ?
「アタシのランチ代になるのよねぇ~! アーッハッハッハ!」
「は? ら、ランチ代……?」
何それ! 感心して損した!!
「じぃ~んせぇってぇ~えええ~、んふふ~ふふふ~ふ~ふ~」
だから!
あやふやなのに自信満々で歌うなよ!!
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