この空に溺れる
雨咲 リリィ
1冊目
離れたい。この現実から。
____何も、生きるのが辛いだとか、いじめられているだとか、そういった深刻な理由は一つもない。友達は少ないけれど、それでも私の話に嫌な顔一つせず付き合ってくれる良い友人がいた。
ただ、味気なくて、堅苦しくて、
まるで色が抜けたような「現実」に飽きただけ。
。*.。*.。*
整備されていない細い川の土手。水流の音と蛍のほのかな光が、時間帯に合った物寂しい雰囲気を演出する。
かと思えば、背後からは雑草を踏む足音が、男女の混ざった声が、幾つも重なって耳に入る。
静かなままでよかったのに、と零す。
制服のスカートがそよ風に揺れる。煙のような匂いが、記憶として鼻に残っている。そして、焦げてしまった十円玉の色も、弟の泣き顔も。
思い返すほど鮮明な光景が蘇ってきて、そこで思考を止めた。
代わりにまた自分の世界に潜ることにして、背後の人々から逃げるように歩くスピードを上げた。「ねえちゃん」と呼ぶのが聞こえたけれど、耳に入らないふりをして歩き続ける。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます