殺人鬼の一生

渋沢慶太

第0話 とある廃工場で

アスファルトを削ずる音が響く。

金属がぶつかっている。

この音に驚いている顔の人もいる。

どこにでもある廃工場に。

その人はいる。

しかも、悲鳴を叫んでいる。

「やめろ…やめてくれ」

椅子に鎖をつけられて拘束されている人がなんか言っている。

泣き顔がとってもキュートだ。

見た目は40代後半男性。

がたいはいい。

でも、手足は華奢な女。

いや、生まればばかりの仔鹿と言ったほうがいい。

その瞳は理不尽な世界を見ている。

その世界を見て泣いている。

そんな仔鹿がなんか言っている。

「お前と俺は何も関係ないだろ…なんでこんなことするんだよ」

「誰でもいい」

「なんで俺なんだよ…俺には家族がいる」

「じゃあ、次は誰にしようかな」

「許さない。…お前をずっと許さないからな」

バットが椅子に座る人にぶつかる。

気がつけば、首はもう折れていた。

まるで、演劇を見ているようだ。

銃声が響くシーンでは暗くなる。

再び明かりがつくまでの時間、驚き顔でいるだろう。

そして、明かりが完全についた時、新たなシーンが始まる。

「まただ…誰かが目の前で死んでいる」

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