雨宮r

「これは何か。そう、鍵です。」

「これは鍵です。なんの鍵でしょうか。」

『お家の鍵だよ。』

「家の鍵ですかね?」

【少し大きすぎない?】

「そうですね。大きすぎると思います。家の鍵ではないのでしょうか?」

『巨人さんのお家だと思う。』

【巨人なんていないよ。】

「そうだろうか?どうして巨人なんていないと思うのですか?」

【だって見たことない。】

『空の上にいるんだよ。ジャックと豆の木で言ってた。』

[空の上か。飛行機に乗ったら見れるのかな。]

「そうかもしれないね。君はなんの鍵だと思う?」

[うーん。悪魔の鍵?]

【悪魔の鍵?何それ。】

[怖ーい悪魔を呼び出す鍵。]

『悪魔なんて呼んでどうするのさ?』

[お願いを叶えてもらうの。]

「どんなお願い?」

[早く大きくなりたいなって。]

【大きくなってどうするの?】

[お父さんを助ける。お仕事をするよ]

【ふーん。悪魔の鍵なんて信じられないけどね。】

「じゃあ、君はなんの鍵だと思うんだい?」

【何の鍵でもないとか。】

「どうして?」

【そんな大きなカギ見たことないから。】

『でもここにあるよ?』

【だから、鍵の形をした別の何かってこと】

「なるほど。じゃあ、部屋の隅で黙ってるそこの君。」

(僕ですか?)

「君だね。君はなんの鍵だと思う?」

(……。)

「唐突に聞かれてもわからないかもしれない。でも、考えてみて欲しい。」

(…………僕は、心の鍵だと思う。)

「心の鍵、か。」

【何それ?意味わかんない。】

(ごめんなさい)

『僕もわかんないからさ。教えてよ。』

(えっと…。僕は話すのが苦手です。そんな僕でも考えを言えるからこれは心の鍵かなって)

「へえ。いいね。」

『いいの?じゃあ、心の鍵ってこと?』

「いや違うよ」

【やっぱり、あなたにもわからないんじゃない】

「そうだね。僕にも何の鍵かはわからない。巨人のお家の鍵かもしれないし、悪魔と契約する鍵かもしれない。さっき言ったみたいに心の鍵だったりするかもしれないし何の鍵でもなかったりするかもしれない。いろいろと考えることができる。宇宙を創る鍵かもしれないし、どこかにあるおっきなお城の鍵かもしれない。何の鍵か考えることは自由だ。だからこれはお話の鍵ともいえる。お話の世界へ行く鍵。いろんなことを想像する鍵だ。このお話は想像することの自由を、創造することの自由を示す鍵だ。」

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雨宮r @amemiyar

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