僕はここから動けない
@anna_____0527
第1話水曜日の薔薇
この子、僕と寝たいんだ。そう気付いているけれど僕は「終電がなくなっちゃった。」と言う彼女を隣に呆れながら早足で駅に向かう。
「何度も終電大丈夫か確認したよね?それでも藤田さん大丈夫と言わなかった?」
「でも先輩といる時間が楽しくてつい・・・わざとじゃないんです。本当に。」
一生懸命僕の歩幅についてくる姿は可愛らしいと思うし、自分でもこの状況がおいしいことだということも理解している。彼女は後輩の中でも人気がある方だし僕の隣の席の同僚もこの子を狙っていると喫煙所で話しているのが聞こえた。
それだけが理由というわけではないが、この子と関わりたくないという気持ちが彼女の甘ったるい香水と混ざって僕を不快にする。
大井町駅のタクシー乗り場に着くと週の真ん中だというのにかなりの人が列になっていた。僕は財布から1万円を取り出し彼女に握らせた。
「とにかく絶対に僕の家は無理。人を入れたくないんだ、頼むから帰って。タクシー代出すから。」
「私お金が欲しいわけじゃないです!ただ先輩と・・・」
知ってて知らないフリをしてるのがわからないのかと思っていると、彼女が少し緊張した面持ちになった。自分の顔が不機嫌な顔になっていたのか少し不安になる。
「とにかく僕はこれで、また明日。」
逃げるように彼女をその場に置いていき、改札に入る。ホームに向かうサラリーマンたちに紛れ込んだのに彼女の視線がまだこちらにあるような気がして急いで電車に飛び乗った。
東京駅という機械的なアナウンスの声にはっと目が覚めて乗り越していないことに安心してまた目を瞑る。読みかけの本にしおりを挟み忘れ、また最初から読むことになるのを頭の片隅で考えながら意識が遠のいていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます