おいどん剣士SATSUMA

海豹ノファン

おいどん、左江内殺魔ホームレス一年生

おいどんの名前は佐江内 殺魔(さえうちさつま)


おいどんはそれなりの会社に勤めていたがリストラに遭い、妻や娘に逃げられた。


リストラ前から家庭はギクシャクして


妻や娘から粗大ゴミのように扱われていたが今にして思えばあの時は幸せだった。


最も、おかげでストレスから頭は禿げて体型はメタボになっているが。



それだけ今のおいどんの生活は落ちぶれている。


あああの頃に戻りたい。


しかしあの頃には戻れない。


ふとそんな時、おいどんの目の前にトラックが突っ込んで来た。


しかしおいどんは咄嗟の出来事で避ける事もままならず、無駄な事にも関わらず目をギュッと閉じ身を守る事しか出来なかった。


「危ない!」


ふとそんな時、漢の声が聞こえたかと思うとおいどんの体は何者かに強い力でしがみつかれ、そのまま左にダイブし、地面に倒れ込んだ。



衝撃は強かったが幸い怪我は無いようだった。


「怪我は無いですか?」


上を見上げると精悍だが、どこか優しそうな壮年の漢がおいどんに優しい声で語りかけた。


住職の服を羽織り、ブラウンの髪、端正な顔立ちである程度の歳は重ねていても色気は失われていない。


それどころか壮年としての威厳と色気に益々磨きがかかっているような感じだ。


何もかもおいどんと違う。


「は…はい」


おいどんはそう、まるで初恋の女性の前にいるようにその漢に心を奪われていた。


「それは良かった、私の名前は武藤タケル、寺の住職をしている者です、そなたは?」


タケルと名乗った漢の人はおいどんに優しい声で話しかけた。


「お、おいどんの名前は佐江内サツマと申す、サラリーマンでしたがリストラされてしまい、今はホームレスでごわす」


おいどんは最後の方は気恥ずかしさでトーンは低くなっていたが何とかタケル氏に自己紹介した。


「成る程、そなたは見たところ恐ろしい悪霊に取り憑かれておる、少し私の寺に来ていただけますかな?」


え?これって悪徳商法??

通常はそう思われるかも知れないが今のおいどんにはあまりにも心当たりがあり過ぎる。



妻や娘に逃げられた後、職もありつけずホームレスになってしまったがその間にJKにはキモいと言われ指を指されるのは可愛いもの、少しちらっと目があっただけで冤罪の危機に晒され、



何とか廻避(かいひ)はしたものの直後DQNに絡まれ、大事な物を蹴られてもがくも悪そうな兄ちゃんにはたすけられたが結局は脅され余分な金を持っていかれる羽目となり、今は生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされていた。



自殺と言う選択肢もあったのだがおいどんの家系は熱心なカトリック宗系であり、自殺は法度という厳しい方針で続いていたのでそれを守って来たつもりだったのだが。


そう言うわけでおいどんはとある神社の鳥居をくぐった。



石で出来た階段、神社を守るように立っている獅子の像。


和風の佇まいのある如何にもな見事な建物。



その中で、おいどんの中に潜む悪霊を退治する儀式は行われる。



その前においどんは汗や泥で汚れているので風呂に入ると良いとタケル氏から勧められた。



「タケル氏の風呂を借りるなんてとてもとても…」



おいどんは社会人として辛酸を舐めながら過ごした経緯があり、最低限のマナーで風呂に入るのを断った。



「いやいや、風呂に入る事は悪霊の力を弱めるには良いのじゃ、それにワシの風呂にあるシャンプーとソープにはその力を与えておる、今はお言葉に甘えると良い」


とおいどんの断りにも動じずねっちりと風呂を勧めてくださったのでごわす。



「で…では…」


おいどんは着替えを持ち、申し訳ないと思いつつ風呂を借りる事にした。

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