from:宇宙人からの採用通知
ちびまるフォイ
地球がい生命体ども
『エイリアンとして地球外で一緒にニ仕事してみまセんか?』
届いたのは宇宙人からの仕事募集通知だった。
中にはどうして自分が選ばれたのかなどの記載が細かくされている。
そのことを友達に話すと爆笑された。
「エイリアンからの募集広告?
あっはははは! そんなのあるわけないだろ!」
「だよな。でもお前じゃないんだよな?」
「あのな、今どきからかうにもこんなもの送らねぇよ。
不幸の手紙よりもありえないだろ」
「うーーん……じゃあ一体誰が……」
募集通知の中には自分があまり友達が多くなく、
人間関係についても希薄なことから応募対象としてあがったとある。
「で、どうするの? お前行くの?」
「行かないよ。普通に考えて怪しいだろ」
「まじかよ~~。行ってこいよ。その後話し聞かせろよ」
「……お前、楽しんでるだろ」
「少なくとも犯人は突き止めたいじゃん?」
同級生の靴箱に偽の告白手紙でも書いて反応を楽しむような顔をしている。
信じてはいなかったが友達の言うように、せめて嘘と確かめるために面接日に指定場所へ向かった。
場所は都会にあるビルの1室だった。
「し、失礼します……」
部屋に入ると強めのすりガラスで仕切られ面接官側が見えない。
しかし、シルエットから確実に人間でないことがわかる。
(手が込んでるな……)
「デハ、メンセツ、ヲ、ハジメ、ルマス」
たどたどしい言葉で質問がはじまった。
面接と聞いていたのでいろいろ自己PRを考えていたものの
終始相手からの質問を受け答えるするばかりで時間が過ぎた。
「コレ、デ、オワリデス。メンセツ。ゴジツ、レンラク、スルマス」
「どうも……ありがとうございました……?」
部屋を出てからも釈然としない気持ちがもやもやと残った。
ネタバレされずにここまで進んでしまった。まだ先があるのかもしれない。
質問はどれも個人のパーソナリティや性格、
コミュニケーションに関わるものばかりで何を俺に求めているかわからない。
『もしもし? 面接終わった?』
「あ、ああ」
『で、誰に騙されてたんだよ。教えろよ~~』
「それが……普通に終わっちゃって。ネタバレなかったんだ」
『は?』
「仮にさ、これがドッキリだとするならお前は仕掛け人だよな。
こんなにターゲットに話しかけるのってまずくないか」
『そう言われても……』
「まあ、お前は仕掛け人じゃないと思うけど」
じゃあ誰がいったいなんのために。
わざわざ一室まで借りて、すりガラスを用意して、面接で時間を使って。
手紙まで書くほど手のこんだいたずらをするのか見当もつかない。
もやもやした気持ちを引きずりながら数日後、本当に通知が来てしまった。
『 採用通知 』
貴殿は見事地球人としてワレワレとともに
仕事するにふさわしいと判断しました。
ツきましては指定日にワレワレの母艦に起こしクださい
「うそだろ……?」
ここまで来るとドッキリだと納得させる思考も鈍り始めていた。
逆に「知ってたよ」と笑うつもりが話が大きくなりすぎている。
真相を確かめるべく指定された日に行ってやろうと心に決めた。
これ以上答えのわからない問いに頭を悩ませたくない。
母艦が到着するその前日のこと。
―ピンポーン
「はい?」
珍しく家のインターホンが鳴らされた。
玄関をあけると「ドッキリ大成功」と書かれたプラカードを持った
見ず知らずの人が玄関にたくさん待ち構えていた。
「ドッキリ、大成功~~!!」
「え? ええ?」
「いやぁ、驚いたでしょう。エイリアンからの通知がきたことに。
アレ実はすべてドッキリなんです」
「そ、そうだったんですかーー。びっくりしたぁ」
「そうでしょうそうでしょう。では、採用通知と募集通知を渡してもらえますか?」
「あの、ちなみになんていう番組なんですか?」
「『素人ドッキリ大賞』です」
「聞いたことない……」
「新番組なのでこれからなんですよ」
「それじゃずっとカメラを回してたんですか?」
「ええまあ」
「映像見せてもらえたりします?」
「それはオンエアを楽しみにしてください。それより通知を」
「……あとで郵送でもいいですか?」
「ではこちらの住所に」
渡された住所は政府がある場所だった。
「なんでこの住所なんですか……?」
「国営放送なもので」
「はあ……」
撮影スタッフが帰ったあとも煮え切らない気持ちが残った。
よく考えてみれば普通素人にカメラを回すとなれば
暴露したあとでオンエアしていいか確認するものじゃないのか。
それにやたら通知を回収したがっていたし……。
手紙をドッキリのたびにリサイクルなんて普通しないだろう。
「なんか……おかしいよなぁ……」
宇宙人か人間か。どちらを信用すればいいのか。
友達にもこのことを相談してみようと電話した。
『え? ドッキリだったって?』
「ああ。でもそうは言われたけど信じられなくって……」
『それはお前がこれまで長いあいだエイリアンだと考えていたから
今更ドッキリだと言われても腑に落ちないだけさ』
「……俺、やっぱり明日母艦に行ってみようと思う」
『そうか。で、その場所は?』
「なんで?」
『気になるじゃん』
「いや、採用通知には自分以外に教えちゃダメってあるんだ」
『ドッキリを信じてどうするんだよ』
「ドッキリなら母艦のくだりいらないじゃないか。
指定場所や時間まで書いて……おかしいよ」
『それは信用させるためだろ?』
「そうとも……思えない」
『お前、エイリアンに採用されたら人間の敵になるんだからな』
「ど、どうしたんだよ急に……」
『それ明日は何時頃に家を出るんだ?
指定された場所はどれだけ遠いんだ? 近いのか?
どの交通機関でいくつもりなんだ? なあ? なぁ? なぁなぁ?』
思わず通話を切ってしまった。
何度も折り返しの連絡はきたが出ることはなかった。
あんなにぐいぐい来られることは今までなかった。
まるで何かに強要されているような必死ささえあった。
カーテンを薄く開けて外を見ると街頭の近くに知らない人が何人も控えている。
「ドッキリは終わったはずだろ……」
翌日。玄関を使わずにトイレの窓から外に出て指定の場所へと急いだ。
途中何度も交通機関を乗り換えて追手を振り切る。
まるで自分がとてつもない犯罪者のような気分になる。
「や、やっとついた……」
指定された場所は背の高い植物の畑だった。
空を見上げるとステルス装置が解除された母艦が目前に迫っていた。
「ノッテクダサイ」
地上に降ろされた光の柱の中へ入ると体が浮き上がる。
「いたぞ!!」
そのとき、俺を追っていた人たちが必死に入ろうとするが
指定された人物しか体が浮かないらしく地上でジャンプするばかり。
母艦に収容されるとすりガラス越しに見たシルエットと同じ宇宙人が待っていた。
「ど、ドッキリじゃなかったんだ……」
母艦は一瞬で風景は宇宙へとワープした。
さっきまで見た地球が見える。
「コノタビ、ハ、ワレワレのタメにキテクレテ。ありがトウ。
ワレワレとトモにこの宇宙船のクルーになってもらいタイ」
「あの、でも……俺に何ができるんですか?
スマホだって使いこなせないような男ですから
こんな宇宙人のオーバーテクノロジーなんてとても……」
「イイエ、安心してくだサイ。操作する必要はありまセン。
アナタ、ハ、惑星侵略アドバイザーと、シテ、採用しましタ」
「惑星侵略アドバイザー!? そんなのもっと無理ですよ!!
俺なんて、いままでその手の知識なんてこれっぽっちもないんですから!」
エイリアンたちはお互いに顔を見合わせた。
「そんなハズはナイデショウ? ダッテ……」
窓の外に見える地球をさした。
「アナタガタ地球人ハ、ワズカな時間デ、
惑星をあんなに侵略したジャナイデスカ。
その手腕をゼヒここで生かしてホシイノデス!」
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