「秋山が立たされた理由」欄のある学級日誌 23.5冊目🛩

如月 仁成

予告編  シレネのせい


 ~ 七月二十八日(日) ~


  シレネの花言葉 しつこさ



 君のそれは、世間一般では曲解と呼ばれるものなのです。


 店長さんが言ってたの。お店にあるものは、なんでも使っていいの。


 お店にあるお金でピザを注文するのは、アウト。


 じゃあ、届いても食べないの? マルゲリータ。


 ……食べますが。マルゲリータ。


 それよか、さっきのお話をもっとするの。


 珍しいですね、料理をほっぽってまで。


 そりゃ夢中になるの。ママとの思い出作り。


 でも、アイデア出尽くしましたね。しかもピンとこないものばかり。


 そんなこと無いの。例えば……、ワンコ・バーガーのデザインをするの。


 意味分かりません。ロゴでも作るの?


 ううん? 建物。このお店、リニューアルするらしいから。


 リニューアル?


 改築するから、そのデザインをするの。楽しそう。


 まてまてまて。いつ? バイトはどうなるのです?


 夏休みは書き入れ時だから。終わってからだと思うの。


 まあ、そのあたりでしょうね。


 緑と黄色のお店にするの。


 まだ言いますか、しつこいですね。……そんなに気に入った?


 気に入ったの。だから緑に塗った店内に、蛍を放し飼いにするの。


 地獄絵図です。彼を飲食店内で見たら、百パー別の方と間違われます。


 どなた?


 黒油飛蔵さんです。


 ごはん前に、飛蔵さんのお話はいかがかと思うの。


 君と話していると、変なもんばっかり出てきますね。誰かに頼りますか?


 じゃあ、こいつに頼るの。


 これまたしつこいですね。まだ持ち歩いてますか、ルーレット。


 思い出探しのプロフェッショナル。


 探すのではなくて、作るのでしょうに。


 そうだった、これから作るの。…………あれ?


 どうしました?


 緑の中の黄色、見た気がするの。


 君の頭のスゴロク、作り直しなさい。ゴール直前の六マスが全部「ふりだしへ」になってます。


 違うの。パパとじゃなくて。ママと。


 しつこいのです。もうそれは終わ……、あれ? ……ん?


 道久君も見た?


 いえ、見て……、ない? あれ?


 しっかりするの。ちゃんと思い出すの。



 ――おじさんと見た緑と黄色ではなく。

 おばさんと見た、緑と黄色。


 しつこいようですが。

 また、探すことになりそうです。


 ……が。



 回しなさんな。


 こいつの方が道久君よか頼りになるの。


 ルーレットは却下なのです。それ、ろくなことになりませんし。


 黄色、確定。


 なにが出たのです?


 バナナ。


 そんな、バナナ。


 またそれ? しつこいの。うにゃうにゃ言ってないで、見つけるの。


 ……頑バナナ張らな


 しつこいの。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る