私の辞書に失恋の二文字はない!

貴美

まずは聞いてくれ

 告白してOKが貰えるなんて最初はなっから信じてなかった。つまりフラれるのは想定内。学年も違う。会話というのもしたことがなかった。ただただ先輩を見つめるだけの日々だった。それでも良かった。先輩はモテるし、彼女はいないと言っているのも、その人を庇っての嘘かもしれない。この時点で私の勝率はゼロ。そう思ったら逆に吹っ切れた。そして昨日晴れてフラれた。優しい先輩らしい思いやりある言葉を並べた後、最後にごめんとキッパリと。私の目に狂いはなかった。好きが増してしょうがない。失恋? 恋を失わないのにどうして失恋しなきゃいけない。私は改めて恋をした。この場合「改恋」というのか? まぁそんな訳で翌日、まさに今朝だ。


「先輩おはようございます!」


 挨拶運動中の先生の傍らで待機していた私は、他の生徒にも元気よく挨拶しながら先輩の登場に一言付け加えた。私の声に先輩が目ん玉カッぴらいて「え?」っと呟いていた。あ、意識されてる。それだけで嬉しかった。なぜなら告白するまでは風景同然だったのだ。まさに怪我の功名。え、違う?


 自主的に挨拶運動に参加していた私だが、目的は果たした。さぁ教室に戻ろうとしたら先生に首根っこを掴まれた。最後まで責任もってやれってことね。へーへー。ふと先輩を見ると未だにこちらを凝視していた。え、嬉しい。とっくに教室に戻っていると思ったのに! ついつい抑えきれない満面の笑みを向けたら怪訝けげんな顔をされた。ありがとうございます。どんな認識でも私は嬉しいのです。

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