【選択肢】トイレの場合
いくら毎度のことといえども、そこにだけは行きたくない。
「……やめろっ……はなせ……」
抵抗を試みるも、腕力ではかなわない。
Kは男子生徒数人と一緒に、僕を男子トイレに連れてきた。
洗面台の前に僕を立たせる。そして、Kは右足を少し上げ、かかとで僕を蹴った。あまりの痛みに身体を丸める。体の小さい僕はタイルの上に転がる。
さらに、周りにいた他の男子生徒までが僕の体を蹴り始める。僕は声をあげることもできないし、手も足も出せない。何も抵抗できないまま、僕は転がり続けた。
するとある瞬間、お腹に強い衝撃が走った。Kのかかとだ。Kの力は強く、僕は飛ばされるようにして、頭を壁にぶつけた。
真っ白になりそうな頭の片隅で、Kたちが笑いながら話す声が聞こえた。
「女が“僕”だなんて気持ち悪いんだよ」
蹴り続けて気が済むと、彼らは去って行った。
しばらく経てば僕も戻る。男子トイレから出るところを他の誰かに見られないように、周囲の目を気にしながら。
これが僕の日常だった。今までだってそうだったし、これからもこの日常は続くだろう。
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