想い

勝利だギューちゃん

第1話

夜空を見上げる。

ここは、ド田舎なので、ビルなどはない。

なので、満天の星空が見える。


まさに、天然のプラネタリウム。


「あいつ、元気かな・・・」

思わず声にでる。


人は死んだら、星になるというが・・・

俺には、そんな少女趣味はない。

第一、家族も友達も知り合いも、幸いな事に、だれも死んでいない。


そう、身の回りの人間は・・・


ここでいう、あいつと言うのは・・・


「どう、ここでの生活は・・・」

「悪くないな・・・」

「それは、よかった」


早速、お出ましのようだ。


「久しぶりだね」

「ああ、最後に会ったのは、2年ほど前か・・・」

「私からしたら、最近だけどね」


この少女は、ゼル・・・

当たり前だが、人間の女の子ではない。


以前、俺は都会で交通事故に遭い、生死の境をさまよった。

その時、あの世で世話になったのが、このゼルだ・・・


「君の静養にはいい場所でしょ?」

「世話してくれてすまない」

「いいって・・・」

「でも、随分顔を見せなかったな」

ゼルは、うなずく。


しばらくは、地元でリハビリをしていたが、どこかに恐怖心があったのだろう。

その時、ゼルが静養所として、ここを紹介してくれた。


どうやったのかは知らんが・・・


「まるで、天使だな」

「天使だもん」

こういうやりとりも、楽しいものだ・・・


「最近、急に忙しくなってね」

「善人が増えたのか?」

「善人とまではいかないけど・・・」

言わなくてもわかった。


罪のない大勢の命が、理不尽なひとりの身勝手な犯行により、

奪われると言う事件が、最近立て続けにおこった。


「人間って残酷だよね、一番怖い生き物だよ」

「ああ、俺もそう思う」

「否定しないんだね」

「ああ」

そう、生きている人間が一番怖い。


しみじみ、そう思う。

そして、運命もまた残酷だ・・・


「あっ、もういくね、彼らや彼女たちを、天国へと誘わないと」

「ああ、お仕事がんばってくれ・・・、というのも、失礼か・・・」

「ありがとう。また来るね」

「ご機嫌伺いなら、歓迎する」

「じゃあ・・・」


こうして、ゼルは去って行った・・・


以前、天国と地獄の境目を、君自身で確かめてと言われたが、

わかり始めてきた・・・


俺の静養所は高台の上にある。

大勢の入居者が、星を見に外へ出る。


俺を見つけた人たちが、俺に手を振っていた。

ありがたい。




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想い 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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